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みなさん、こんにちは。H松です。今回は、演劇・映画から学ぶ社会の特別企画!として、なんと、元NHKアナウンサーで、現在はエッセイストとしてもご活躍されている山川静夫さんを、まなキキのこのサイトにお招きして「歌舞伎のたのしみかた」を語って頂きます。今回は、第1回目!H松がなぜ山川さんをお招きしたのか・歌舞伎ってなんだ?という、オープニングの部分をお伝えします。
山川静夫さんのプロフィール

静岡県静岡市出身。國學院大學をご卒業されたのちに、NHKに入社。アナウンサーとしてご活躍され、紅白歌合戦の司会や人気科学番組「ウルトラアイ」の司会を歴任される。NHKご退職後はエッセイストとして歌舞伎や文楽に関する著作を多数ご執筆されています。
さっそく、山川さんに歌舞伎のたのしみかたを語って頂きたいのですが…。そのまえに…。なぜ、まなキキの社会のページに山川さんからのコメントを頂けることになったのか、ちょっとだけみなさんに理由をご紹介させてくださいね。
H松と山川さんとの奇跡的な出会い

山川さん(著名な方に向かって「さん」と申し上げるのもおこがましいのですが…)との出会いは、H松が7歳のときに遡ります。
H松、七五三にいく。
山川さんとの出会いは、H松が静岡市にある「静岡浅間神社」に七五三詣をしたことがキッカケでした。浅間神社の本殿にお参りをしたときに、「テレビでよく見る人がいる!」と気が付き、こともあろうに一緒に写真を撮って頂いたことが、山川さんとのご縁の始まりだったのです。
静岡市に住んでいる人たちから「おぜんげんさん」と言われて親しまれている神社のことです。静岡、という地名の由来になった「賤機山」のふもとにある神社で、いつも沢山の参拝客でにぎわっています。能を作った、観阿弥さんが人生の最後に舞った場所がこの神社の舞台だったり、徳川家康さんが元服式(今で言うと、20歳になったときの成人式のようなものですね)を行ったのがこの神社であったりと、歴史に名を残している人たちにゆかりのある神社でもあります。なお、歴史的に何も有名ではないH松は、この神社の近くの高校に通っていたのですが、定期テストのたびにお参りをして、困ったときの「神頼み」をしていました。
H松、文通を続ける。
七五三のお参りで、山川さんとお会いし、一緒に写真を撮って頂いたH松でしたが、そのお写真を山川さんのご自宅にお送りするためにお手紙を書いたことから、大人になった今に至るまで、お手紙のやり取り(文通)を続けることになりました。
その手紙の書き出しは、子どもの頃から変わらず…
「山川のおじさんへ。お元気ですか?私は元気です。」
という、大人から見ると「ちょっと不躾…」にも見える書き出しではじまります。
礼儀作法をわきまえていないこと。無作法。(三省堂 大辞林 第三版より)
そんな、ちょっと「不躾」なお手紙に対しても、山川さんは毎回、私からの質問やコメントに対して、真摯に向き合い、適確なお返事を書いて返して下さいました。
静岡の片田舎で育った私にとって、NHKの歌舞伎中継や文楽の番組だけが、伝統芸能を身近で学べる教材でした。番組を見て、「この演目や、この役者さんの演技はこういう風に感じたのだけれど…」と、子どもながらに少し背伸びをして、つたない感想を書いては山川さんにお手紙を送り…山川さんからの鋭いお返事を頂いては、少しずつ少しずつ、歌舞伎や文楽の知識をつけていくことができました。
今では、私はどちらかというと、宝塚が専門(のようなもの)ですが、歌舞伎や文楽の前知識があることによって、宝塚の日本物のショーを見る時には「ああ、このシーンは歌舞伎の〇〇を元にした場面なんだな」と、より深く宝塚を楽しむことができています。和歌の世界には、本歌取りという技法がありますが、まさにそれと同じような楽しみ方です。歌舞伎の演目に用いられている表現を引用して、宝塚流に仕立て直された場面を見ると、元ネタの歌舞伎の演目のイメージと照らし合わせて「今回の宝塚は、こうやってアレンジしてきたのかあー。」と、フムフム頷きながら見入ってしまいます。こうした楽しみ方ができるのも、それだけ、歌舞伎や文楽という芸能が、日本の演劇の基礎になっているからなのかもしれませんね。
山川さんは、私にとって、「学びのナビゲーター」のような存在であり、人生の大先輩です。幼い頃の何気ない出会いによって、文化を学ぶことの面白さや、大切さを学ぶことができたと思っています。
H松、山川さんに「まなキキ」へのご寄稿をお願いする。
7歳からずっと今まで、文通を続けさせて頂いた山川さんに、H松はまたしても不躾にも「まなキキ」で歌舞伎特集のページを作りたいとご相談をさせて頂きました。演劇の場が次々と休業に追い込まれ、歌舞伎や文楽も過去作品をインターネットで観るしかない状況下では、今まで歌舞伎を一度でも実際に見たことがある人はともかくとして、全く歌舞伎を見たことがない人が果たして解説もなしに、インターネットで歌舞伎を楽しめるのだろうか?歌舞伎は難しくて、よくわからないものだとこれからずっと思われ続けてしまわないだろうか?と一抹の不安が頭によぎったからです。
歌舞伎座に行けば、詳しく解説をしてくれる音声ガイドを借りることができたり、歌舞伎座に通い詰めている「先輩方」が演目の見どころを、ちょっと辛辣で、でも愛のあるコメントとともに教えてくれたりもします。しかし、インターネットの配信ではそうもいきません。すでに歌舞伎のたのしみ方を知っている人は、画面に流れてくる「高麗屋!!」という字幕の掛け声を見て、タイミングの良さに感嘆の声を漏らすことができますが、試しに歌舞伎を見てみようかなと思った人にとっては、なぜこのタイミングでみんなが高麗屋と叫んでいるのか全く分からない…と戸惑ってしまうとH松は思いました。たのしみ方を教えてくれる人がいない状況で、ただ淡々と歌舞伎の映像が流れても、「なんのこっちゃ…」で終わってしまうのでは、寂しい限りです。
今までは東京や大阪の劇場に行かなければなかなか観ることができなかった歌舞伎が、インターネットの配信になったことによって、観ることができる機会そのものは増えているのに、結局、歌舞伎のたのしみ方をすでに知っている人・身の回りにたのしみ方を教えてくれる人がいる人しか楽しめないのでは、歌舞伎を観るまでの「距離」の遠さは変わらず、あまりにもったいない状況にあると言えないでしょうか。
歌舞伎には、たくさんの「お約束」があります。その「お約束」を、いままで分かりやすく解説して下さってきたのが、山川さんです。インターネットで、歌舞伎のたのしみ方を学ぶことができそうなサイトをH松は探したのですが、漢字が多くてふりがながなかったり、専門的すぎる内容がたくさん載っているサイトばかりで、みなさんにご紹介するには「もう一声!!」と歯がゆい想いでした。そこで、山川さんの過去の著作の内容を、H松が「まなキキ流」にご紹介しなおさせてもらえないでしょうか?と山川さんに不躾なお願いをしてしまったというわけです。
こんな突然の不躾なお願いにも関わらず、山川さんは「私の過去の著作をいかようにも使って、子どもに分かりやすいように、H松さんのセンスで上手く書いてくださいな」と掲載をご快諾下さりました。そして、少しでも役に立つのであればと、たくさんの資料をお送り頂きました。
今回の社会科特集は、山川さんの名著を、拙文で有名なH松が語り直すという、前代未聞の企画になります。子どもたちのためになれば、とH松の企画にご快諾下さった山川さんに、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

ということで。H松による、前座(主な出演者の前に出てきて、会場の雰囲気を温めること)はここまで。
いよいよ、「待ってましたあ!!」と、山川さんをお呼びしたいと思います!!それでは、山川さん、よろしくお願いいたします。