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演者のご紹介

花岡 恵梨香 さん

清水建設株式会社
LCV事業本部 ICT・スマート事業部
2013年津田塾大学学芸学部情報科学科卒
2015年同大学院理学研究科情報科学専攻 修士課程修了
2020年同大学院理学研究科情報科学専攻 後期博士課程単位取得後退学
修士課程在学中の2014年に病気の後遺症により四肢麻痺となる。2016年末にリハビリの一環として水泳を始め、2017年よりパラ水泳を競技として始める。競技を始めて半年で出場した、国内最高峰の大会ジャパンパラでいきなり優勝。
2018年全国障害者スポーツ大会東京都代表に選出された。数々の大会で優勝や大会新記録の更新を重ね、全国大会でも多くの入賞経験がある。その実績が評価され、2018年江戸川区体育優秀選手、江戸川区スポーツ栄誉賞を受賞。
2019年のジャパンパラ大会では2冠を達成し、自己記録の更新をし続けている。前年に引き続き、江戸川区スポーツ栄誉賞を受賞。
2020年4月に清水建設株式会社に入社し、社員として自身の経験を活かしながらインクルーシブな社会の実現のために、スマートフォン向けアプリ「インクルーシブ・ナビ(App Storeから)(google Playから)」の開発・普及に関わっている。また、清水建設株式会社所属のパラスイマーとしても会社にサポートしてもらい、活動している。

ご講演内容
身体障害者といってもその障害の部位はさまざま。身体障害者の中でも特に肢体不自由、車いすでの生活についてお話します。
後半は障害者スポーツについて。障害者スポーツの大会というと、来年に延期されたパラリンピック大会をイメージされる方も多いのではないでしょうか?パラリンピックという大きな国際大会の他にも、様々な障害者スポーツの大会が開催されています。障害者スポーツに取り組むパラアスリートは自分の障害と向き合いながら、最高のパフォーマンスを目指して努力しています。
今回はパラ水泳を中心に障害者スポーツの魅力を実際の映像を交えながらお伝えします!
講演報告
当日は、障害のこと・障害者スポーツやパラ水泳について、動画も見ながらご講演いただきました。実際の大会での応援の様子の動画もご紹介いただきました。大会に行って観戦すると、選手の姿から元気をもらい、私たちの側も選手に応援を届けることができますね!
花岡さんの今後の試合のスケジュールも下記でご紹介していますよ!
※ 以下は、花岡さんが当日提示してくださった資料を基に、ダイジェストさせていただいたものです。
身体障害:肢体不自由について
とくに肢体不自由について、障害者基本法に基づきながら概説していただきつつ、車いすを使って移動するときのお話をしてくださいました。
日常生活で車いすを使用している人は、さまざまな目的やそれぞれの用途で、車いすを使用しているのですね。
車いすを使う際の注意点
接触
・ 目線が低くなり、子どもと同じような目線になる。
・ 曲がり角など立っている人の目線からはみえないこともある。
・ 後方への注意も必要。
転倒
・ 車いすに乗り降りする際は、必ずブレーキをかける。
・ 段差を越えようとして、後方に倒れそうになることもある。
・ 小さな段差や排水溝などでも前輪が乗り越えられないことがる。
その他
・ 車輪を直接漕がずハンドリムを使う。
・ 立つときはフットレストをきちんとあげて、地面に直接足をつけて立つ。

身体をつつみこむように、車いすの背もたれ部分にクッションをおいておくなどの工夫や配慮も大切なのですね。

実際に車いすに乗ってみる街の様子や、車いすでのエスカレーターの移動、駅構内の階段をエスカルを使って移動する際の様子を動画でもご紹介いただきました!

会場からも、海外のエスカレーターは車いすユーザーでも簡単に乗りやすいように、階段のステップのサイズが広くなっている例などをご紹介いただきました。
障害者スポーツについて
障害者スポーツの大会についても、パラリンピックやスペシャルオリンピック、デフリンピック、全国障害者スポーツ大会などがあり、障害の種別によって参加できる大会が異なっていること、大会として確立していった経緯についてお話しいただきました。
また、全国障害者スポーツ大会競技規則の解説から、障害者スポーツ全般の基礎知識もご紹介いただいています。
・ 特定の障害がある人が出場できる
- 障害の内容・程度に基づき、区分(クラス)が与えられる。
ー 与えられた区分(クラス)に基づいて競技を行う。
・ 基本的なルールは健常者と同じ
- 競技・種目によって障害によるルールの緩和がある場合がある。

「障害の内容・程度に基づき与えられる区分(クラス)」がある、ということも、なかなか知る機会がなかったことかもしれませんよね。

全国障害者スポーツ大会が開催される際は、地元のボランティアの方々や選手のみなさんとの交流の様子もご紹介くださいました。
音楽に合わせてダンスを踊ってみたり、選手同士が筆談でやり取りをしたり、応援席で選手とボランティアの人たちが一緒に声を上げて応援したり、交流の様子もとても素敵でした。
オリンピックとパラリンピック競技
パラリンピック競技は、
・ ゴールボールやボッチャなどのパラリンピック独自競技だけではなく、
・ 水泳や陸上競技などオリンピックと共通する種目、
・ ルールが少しだけ異なる5人制サッカー(ブラインドサッカー)や車いすラグビー、車いすテニスなど
があり、東京パラリンピックでは22競技が実施されるのだそうです。

ゴールボールについても動画で紹介してくださいました。
ボールの中に入っている鈴の音や選手の足音、床の振動などを感じ取って競技する種目!新たな面白さ・魅力を感じました。
パラ水泳
パラ水泳のクラス分けについてもご紹介くださいました。
同じような障害程度のものが公平・公正に協議を行うために、必要な手続きやテストを行って、競技者をグループ分けするのだそうです。
泳法は、健常者の泳法(FINA規則で定めた泳法)を基本とするそうですが、障害のためできない場合やけがの危険がある場合、FINA規則の泳法を緩和したり追加して規則としたり、競技者の障害状況に応じて泳法が決まってくるのだそうです。

視覚障害の人や聴覚障害の人がパラ水泳に参加するときの工夫もご紹介くださいました。
視覚障害の選手がゴール(プールの壁)に近づいてきた場合は、釣り竿のようなものの先端にスポンジがついたもので、泳いできた競技者にタッチ(タッピング)して、壁の存在を知らせるのだそうです。

聴覚障害の競技者がスタートするときは、ストロボ/ライトを使って合図するのだそうです!

他にも、スタートの仕方や泳法に関しても、いろいろな工夫や配慮があることを、動画を通じてご紹介いただきました!
また、介助者の方との連携も、競技していくうえで不可欠、ということもお話しくださいました。
さいごに
まとめのスライドを通じて、
障害といっても人によってさまざまで、一人ひとりの個性を理解し、個人に合わせた介助・ケアを行っていくことの大切さを語って下さっていました。
参加された多くの皆さんが印象に残ったとしていた言葉を最後にご紹介させてください。
「パラアスリートは残された機能を最大限使って競技に取り組む」
「チャンスがある限り、挑戦を続け、夢を追い続ける」
「見ている人の心に響く泳ぎ」
花岡さんは、津田塾大学創立120周年記念事業「Diversity of Our Lives ―120通りの私たちの生き方ー」でも紹介されています!
ぜひ、チェックされてみてくださいね。
感想・質問などのご紹介
当日会場でもいくつか質疑応答がありました。一部ご紹介させていただきます。
質問
質問1
様々な競技がある中でなぜ水泳という競技にしたのですか?
リハビリのために東京都障害者総合スポーツセンターの水泳教室に通い始めたことがきっかけです。
2016年のリオパラリンピックをテレビで見ていて、麻痺のある選手も残された機能を使って泳いでいる姿を見て、体を動かすことでリハビリになるのかなと思って水泳を始めました。
週に1度の水泳教室で、水の中では自由に動け、やればやるだけ泳げるようになるのが楽しく教室が終わってからも泳ぎ続けました。その頃は単純に泳げることが楽しくて競技としてやるという意識はなく、遊びに行く感覚で泳いでいたと思います。
そんな中で、ある日泳いでいたら東京都障害者スポーツ協会の方から「競技として水泳に挑戦してみませんか?」と声を掛けられました。リハビリ目的で始めて遊びに行く感覚で泳いでいたので競技として取り組むか悩んでいたところ、スポーツセンターのスタッフの方から「誰でも声をかけてもらえるわけではないし、チャンスがあるなら挑戦してみたらいいと思う」と背中を押してもらい、競技として始めてみることにしました。
質問2
大会での介助者が初対面の場合もあるのでしょうか。その場合、信頼関係を築くまで時間がかかってしまい、パフォーマンスに影響が出てしまうのでは?と思いました。
大会時の介助者は基本的に自分で探します。家族や所属先の人に依頼することが多いので、初対面の人ということは少ないかと思います。ただ、自分で見つけられなかった場合には大会役員に依頼できることもあります。そういった場合には初対面となります。依頼する介助の内容にもよりますが、初対面の人の場合は自分の思う介助やそのタイミングではないということもあるので、パフォーマンスに影響することもあります。
なので、自分で介助者を探し、普段の練習から一緒に取り組んでいくことが大事になります。
質問3
花岡さんは、自分自身に起こった障害を、どのように受け入れられましたか?(葛藤などもあったのではないかと思って…)
私の場合は体調が悪くなり、少しずつ麻痺が出始め、という段階を踏みました。また、自分自身の生活習慣等が原因の病気ではありませんでした。そのため、少しずつ動かなくなる中で自然と麻痺というものを受け入れ、あのときあぁしてれば、という瞬間もなく、自然に受け入れられました。
元々やっていた陸上競技ができない、というのとはもちろん辛いこともありましたし、動きにくいことで諦めなければならないこともあり障害がなければと思うことはありますが、障害があるからこそ気づけたこと、出会えた人、広がった世界があるので、障害がある自分を受け入れられました。
質問4
初めて肢体不自由になった際に水中に入るときに、恐怖心はなかったでしょうか。
初めて水に入った時はあまり深く考えていなかったので恐怖はありませんでした。泳げるのかなぁとは思いましたが、水に入るのが気持ちよく、楽しさが勝っていました。実際、泳いでみると意外と泳ぐことができたのが何より嬉しく、水の中では自由に動くことができ、水に浮かぶことが楽しかったので、怖さは全く感じませんでした。
質問5
水泳以外にも最近他のスポーツをしているとおっしゃっていたので、それについても何か気を付けていることや特別なルールがあったらお聞きしたいです。
卓球やテニスに挑戦していますが、握力があまりないので、ラケットを握るのが難しく手に固定して(ゴムバンドでくくりつけて)プレーしています。手に固定するときもきつくなりすぎないことに気をつけたり、知らない間にラケットやボールが体にあたってケガをしていないか、終わった後に確認したりしています。
他にも普段あまり行わない動きをするので、体を傷めないように気を付けています。
感想
今回の講演会で、障害の種類や障害者スポーツに関してまで幅広く知ることができました。
特に、車椅子目線の映像や、エスカレーターでの車椅子移動、エスカルの利用映像を見ることができたことは、身体障害者がどのような目線でどのようなことを考えながら過ごしているのかを知る良い機会になりました。
また、私は東京オリンピックでのボランティアに応募しており、その事前研修を受けたことがあるのですが、その時に車椅子の方への接し方を学んだことを思い出しました。今回の講演で実際の映像などを見ることができて当事者の立場を知ることができたのでとても勉強になったし、ボランティアに活かせたらと思います。
以前、ある授業で「障害者は誰かの助けを必要としているため、健康とは言えない」という考え方があることを知りました。しかし、花岡さんのお話を聞いて、眼鏡をかけている人がメガネの力を借りて物を見ることができるように、介助者が必要だからと言って「健康じゃない」とは言えないと感じました。
もし、障害を持つ人が「健康」ではないのであれば、それは障害を持つ人自身ではなくインクルーシブな社会でないということに責任があると思いました。
様々な障害について、また障害スポーツについて知ることができた。講習を受けるまでは、正直障害者スポーツは身近でないと感じる部分が多かった。しかし、このようなスポーツの大会で、開催地の人々、出場者同士の交流を持つことで障害についての理解が深まるのではないかと思った。
大会の入場料が無料でも人が集まらないのはとてももったいないと感じた。
東京パラリンピックも開催される予定のため、機会を作ってぜひ観に行きたい。
花岡さんが、障害という名に囚われること無く、自分自身に向き合い、さらに、他の障害への理解を深めている姿勢に、強く感動しました。
また、様々な障害の理論から実際の生活問題まで、私自身の視点や気づきの増加に繋がったとともに、障害と一緒に生きている方だからこそ、感じたり気づいたりする点が豊かで、勉強になりました。また、障害ということに対して、自分なりにさらに深く考えていきたいと感じました。
この授業で初めて全国障害者スポーツ大会について知ったのですが、地元の人と踊るなど交流が多いことが魅力なのだと思いました。
またパラスポーツ大会の種目として、柔道、馬術がありました。私はこの二つの種目は全身を使って行動するため、障害を持っている方にはできないだろうと思ってしまいました。健常者が障害者の方の可能性を狭めているのではないだろうかと思いました。
花岡さん:今後の出場スケジュール
※ 今後のスケジュールはコロナの状況次第で中止となる可能性もありますので、ご了承ください。
第37回 日本パラ水泳選手権大会
【開催日】2020年11月7日(土)~8日(日)
開催延期となりました→ 2021年3月6日(土)~7日(日)
【場 所】セントラルスポーツ宮城G21プール
静岡県富士水泳場
春季記録会
開催中止となりました。
【開催日】2021年3月6日(土)~7日(日)
【場 所】静岡県富士水泳場
ジャパンパラ水泳大会
【開催日】2021年5月21日(金)~23日(日)
【場 所】横浜国際プール
第38回 日本パラ水泳選手権大会
2021年11月 開催予定
リンク
江戸川区スポーツ情報サイトで、花岡さんの戦績など確認できます!
どうぞご確認ください。