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onceuponatimetherewasalittlegirlcalledaliceandshehadaverycuriousdreamwouldyouliketohearwhatitwasthatshedreamedabout
「……暗号!?」と、思われたでしょうか。
「THE NURSERY ALICE(子ども部屋のアリス)」という作品の冒頭を引用しようとしたのですが、なぜだか読みづらい文章になってしまいました。なぜ、読みづらくなってしまったのでしょうか?
今回のテーマとなる「句読法」が、この読みづらさの原因を探るカギとなります。それでは、英語の句読法を学びながら、アリスのおはなしを読み解いていきましょう。
わかち書き
語と語のあいだに空白を入れる表記の方法を、「わかち書き」といいます。現代英語の文章は、わかち書きにするのが一般的です。
先の文章の一部を、わかち書きにしてみましょう。
once upon a time there was a little girl called alice
単語が浮き出て、少し読みやすくなりました。
大文字
アルファベットには大文字と小文字がありますね。どんな時に大文字を使うのか、少し見てみましょう。
すべての文は、大文字ではじまる。
Once upon a time…(むかしむかし)
固有名詞の一文字目も、大文字。
…there was a little girl called Alice…(アリスという おんなのこが いてね)
I(私)は、いつでも大文字。
I think all White Rabbits have pink eyes…(しろウサギって みんな おめめが あかいと おもうんだけど)
ピリオド period [ . ]
…and she had a very curious dream.(とっても へんてこな ゆめを みたんだ。)
periodを辞書で調べると、こんなふうに語義の展開が説明されていました。
ギリシャ語で「ぐるりと回ること」
→ 一巡りの終わり
ライトハウス英和辞典 2012
たしかに、時計でも地球でも、ぐるりと一周まわったら、一区切りつけたくなります。ちなみに、イギリス英語では「フルストップ」とも呼びます。いずれにしても、「止まる/終わる」感じが伝わってきませんか?そういうわけで、ピリオドには、一文を終わらせる役割があります。日本語の句点(。)を塗りつぶして縮小したような記号です。
疑問符 question mark [ ? ]
Would you like to hear what it was that she dreamed about? (いったい どんな ゆめだったか、ききたい?)
ピリオドの上に、曲線が描かれています。これは、日本語でもよく使いますね。「はてなマーク」と呼んでいる人もいるでしょう。主に、疑問文の末尾に置きます。
目で観ても、音声を聴いても、楽しめると思います。ただ、クイズの問題は読み上げてくれないので、答えを聴いてから発音を真似してみるのが良いかもしれません。
感嘆符 exclamation mark/point [ ! ]
…oh dear! (やんぬるかな!)
ピリオドの上に、縦線が加えられています。これも、日本語でもよく使いますね。「びっくりマーク」と呼ぶほうが、なじみ深いかもしれません。exclaimとは、
(苦痛・怒り・驚き・喜びなどで突然)叫ぶ
ライトハウス英和辞典 2012
ことを意味します。ですから感嘆符は、強い感情があふれて叫びたくなるような、感嘆文の末尾に置きます。
コンマ comma [ , ]
Well, this was the first thing that happened. (さあて、これが はじめの ばめん。)
ピリオド[ . ]に尻尾が付いたような形ですね。コンマは、一文の中で何らかの区切れを表します。例文では、感動詞 well の直後に一呼吸置く役割を果たしています。
おまけクイズ1
一文を終わらせてしまうピリオドと比べて、ちょっと弱々しい感じがしますか?でも、コンマがないと、大事件になることがあります。ここで、おまけクイズです。あなたの目の前に、大好きな食べ物(たとえば、プリン)があるとします。「食べようよ!」と、おばあちゃんに伝えたい場合、次のうちどちらの英文を使いますか?それぞれの状況を、よく想像してみてください。
①Let’s eat grandma !
②Let’s eat, grandma !
ヒント
Ieat pudding. → 私はプリンを食べる。
*I → 私
*eat → 食べる
*pudding → プリン
アポストロフィ apostrophe [′]
Wasn’t that a funny thing? (そんなの おもしろくないって?)
コンマとほぼ同じ形をしていますが、コンマと違って位置が上です。アポストロフィには様々な機能がありますが、例文で使われているのは、「いろいろ隠せちゃうアポストロフィ」です。
was not → wasn’t
let us → let’s
of the clock → o’clock
など、アポストロフィは、文字を隠して複数の語をぎゅっと縮めることができます。少し砕けた印象になるので、友だちと話すときなどに使うのが良いと思います。アポストロフィに出会ったら、隠されている文字を想像するのも楽しいかもしれませんね。
おまけクイズ2
さて、クイズその2です。アニメ「ポケットモンスター」に登場するサトシの決めぜりふ「ポケモン、ゲットだぜ!」は、英語で表記すると
Pokémon! Gotta catch ’em all!
となります。このアポストロフィもアルファベットを隠しています。何が隠されているか、わかりますか?
ヒント
’em は、Pokémon の言い換えです。つまり、
Pikachu! Ilove you. → ピカチュウ!オレはおまえのこと大好きだぜ。
という文において、you が Pikachu の言い換えであることと同じです。
コロン colon [ : ]
…the room was full of Alice! : just in the same way as a jar is full of jam!(おへやは アリスで ぎゅうぎゅう、まるっこい びんに ジャムが ぎっしり つまってる、ちょうど ああいう かんじ!)
ピリオドが縦に二つ並んだような記号ですが、コロンは文中に置かれます。例文は、アリスが不思議なドリンクを飲んで、からだが大きくなってしまうシーンです。コロンの後を読むと、どんなふうに大きくなったのかイメージできます。何か説明した後にもっと良い表現を思いつくこと、ありますよね。そんな時はコロンを使って、さらっと付け加えたり言い換えたりしてしまいましょう。
セミコロン semicolon [ ; ]
A White Rabbit came running by, in a great hurry; and, just as it passed Alice, it stopped…(しろウサギが すぐそばを おおあわてで はしっていくところ、アリスと すれちがいざま あしを とめて)
ピリオドとコンマがくっついたような記号ですね。まさに、ピリオドより弱くコンマより強い力を持っています。例文では、白しろウサギが走って(run)止まる(stop)という一連の動きが、途切れることなく(二つの文に分かれることなく)描写されています。
ダッシュ dash [ ー ]
Alice jumped up in a great hurry. And then —(アリスは おおあわてで たちあがって それから —)
大慌てで立ち上がったアリスに何が起きるのか、気になります。ダッシュ(長めの横棒)は、ちょっと言いにくいことへのためらいを表すことができます…なんて言ったら、ますます気になりますね。
ハイフン hyphen [ – ]
blue neck–tie(あおの ネクタイ)
ダッシュよりも線が短くなりましたね。例文で使われているハイフンには、複数の語をつないで一つの単語にする、ジョイントのような役割があります。neck(首)のtie(ひも)で、ネクタイです。白ウサギが首につけています。
引用符 quotation mark [ ‘ ‘ ” ” ]
“I shall be too late!” (ちこくで おじゃる!)
日本語の「かぎかっこ」のような使い方をして、白ウサギのセリフを伝えています。quoteとは、引用、つまり他人の発言や文章などを伝えることを意味します。
おわりに
Once upon a time, there was a little girl called Alice: and she had a very curious dream. Would you like to hear what it was that she dreamed about?
最初の文章と比べてみてください。ぐっと読みやすくなりましたね!これで、アリスのお話を読めるようになりそうです。句読法が上手に使われている文章は、読み手に伝えたいことが伝わり、時には奥ゆかしくも感じられると私は思います。これから英文を読んだり書いたりすることがあったら、句読法をちょっと意識してみると楽しいかもしれません。
アリスのおはなしの続きを読んでみたい!と思ったら、インターネットでも無料で読めるので、ぜひ読んでみてください。
*引用した本 Lewis Carroll (1890) “The Nursery Alice” Gutenberg
(You Tubeにオーディオブックもあります。朗読を聴ききたい時は、ぜひ!)
*翻訳を参考にした本 大久保ゆう訳(2011)「えほんのアリス」青空文庫
おまけクイズの答こたえ
1, (2) 「食べようよ」で一呼吸置いてから「おばあちゃん」と呼びかけている。(1)だと、おばあちゃんを食べることになる。
2, them の th が隠されている。
ちなみに、そもそも何故、them の th が隠されるのかというナゾを考えてみるのも面白いです。(雑談)
’ (アポストロフィ)の省略は、なんでもかんでも隠せるわけではなく、弱い音(消えやすい音。これについては今度またお話したいと思います)を隠します。them なんて、いかにも「強そう」な音ですので(とりあえずカタカナで表記すると「ゼム」)、catch them all の th が隠されるとは考えにくいわけです。ここで、英語の歴史を紐解くと、そのナゾが解決されます。themはもともと、1000年くらい前の英語では、hem と言っていました。hem なら、「弱そう」です(カタカナで書くとすると「ヘム」)。この hem の h がアポストロフィよって隠される習慣が残って、今も catch’em all と言っていると考えると、説明がつきそうです。(雑談おわり)