▶ を押すと文が増えます
本日の紹介者
どうも!みなさん、こんにちは。H松です。私を社会科好きにしてくれた本を紹介したいと思います。
「え、もしかして難しい歴史の本?そしたらもう読むのやめよ」って思いました?そう思ったみんな、ちょっと待ったー!
H松はひねくれているので、歴史の本をご紹介するなんてことはしないのです(笑)
今日は、とっても楽しくて、ワクワクするようなお話がいくつも楽しめる本をお話しますよ!
未来いそっぷ
著者:星新一
出版社:u003crubyu003e新潮社u003crtu003eしんちょうしゃu003c/rtu003eu003c/rubyu003e
出版年:1982
ISBNコード:978-4101098265
概要
みんなが知っている、「アリとキリギリス」「北風と太陽」などの昔ばなしを、今風にアレンジ!!よく知っている話なのに、「そうきたか!!」と思わずびっくりしてしまうような、それでいて、「なるほどなあ」と爆笑しながら納得してしまうような、読み終わった後に不思議な爽快感を感じさせるお話がたくさんのっています。すぐ読める物語ばかりなので、飽きずに読むことができる本だと思います。(なんと、たった1ページで終わる物語もあります。)童話のやさしい世界にちょっとだけ飽きてしまっているみなさんにオススメです。
新潮社さんのサイトのURL:https://www.shinchosha.co.jp/book/109826/
本との出会い
小学3年生のころにこの本と出会いました。それまでは、「かいけつゾロリ」を座右の書にしていたのですが、ちょっと大人ぶってみたくなって、母に何か文庫本がほしいとねだった結果、「これなんてどう?」とこの本を買ってもらうことになりました。
なぜ、よりにもよってこんなひねくれた本をオススメしてくれたのかは、母のみぞ知る、H松家の七不思議の1つです。
この本が拡げた世界
どのお話も短い文章なのに、どこまでも想像力をかきたてられるような本だ!とワクワクしました。最後の一文に予想がつかない衝撃の事実!がまちかまえていたり、その後が気になる不穏な一言があったりと、どの物語も読み切るまでハラハラドキドキの展開が続きます。漢字にふりがなが少なかったのですが、どんどん読み進めたくなって、分からない漢字は、うちのおじいちゃんを捕まえて読んでもらえばよいのだ!という解決策を子どもながらに思いついたりもしました。本を読む楽しさや、学校で習っていない漢字をどう学べばよいかという知恵を与えてくれた本だなと思っています。
そして、「あたりまえ」と思っていたことが「あたりまえじゃない」こともあるのか!と、物事を広い視点で考えてみることの面白さを知ることもできました。社会が変わると、考え方って変わってしまうんだなあ…と。H松が「ひねくれた」大人に育ったのはこの本の教えのおかげさまです(笑)
教科との関連
私たちが生きている社会とてらしあわせて、「あ!たしかに、こういう問題ってあるよね!」と考えながら読むと、きっと、これからの人生を生きていくときの力になると思います。この本には、「これが正しいことだろう」と思い込んで行動した結果、自分では考えてもいなかった皮肉的な結果を招いてしまった人や動物たちがたくさん出てきます。そんな姿を見ることは、「こういう考え方をすると、星新一さんの作品に出てきたあの皮肉的なお話と同じ結果になってしまうかも?」と自分の考え方を見つめなおせる力につながると思います。
そして、みなさんが大人になって、会社で働くようになったときにもう一度読むと「なるほどな」と、星新一さんがこの本で伝えたかった裏のメッセージを発見できると思います。(でも、もしかしたら、その頃には「なるほどな」という新しい発見をする体験が生まれないほど、会社で働くみなさんにとって素敵な環境があることが世の中の「あたりまえ」になっているかも…。そのときは、大人になって読み返してみたけど、今の社会にも言える問題点を何も発見できなかったなあ…と幸せに思ってください。)
この本のなかで、もっとも社会科の学びにつながると思ったお話
この本の中には、H松オススメの、今の社会の学びにピッタリな物語があります。
おカバさま、という物語です。幸せな社会をつくるために、コンピューターが世界の運営のやり方を決めることになった未来を描いている物語なのですが、みなさんだけでなく、大人の皆さんにも読んでほしい話だとH松は思います。人工知能と言われる技術がいろいろな分野に利用されはじめている今の社会において、技術や道具をどのように私たちが利用し、付き合っていくべきかというテーマは、とても大切なテーマになっているからです。
下に、ちょっとだけ、あらすじをご紹介しますね。最後、どうなってしまったのかは、是非、この本を読んで確かめてみてくださいね。
「おカバさまのあらすじ」この物語の舞台は、コンピューターに世界の運営の方法を教えてもらい、人がその指示に従うようになったことで様々な問題が解決し、平和な時代になったなとみんなが思っていた時代。コンピューターが突然、「カバを尊敬して、大切にせよ。これからはカバではなく、おカバさまと呼ぶように。呼ばない人がいたら、罰を与えるように」という命令を出します。これはさすがに変な命令だな、と読者の私たちは思うでしょう?でも、この時代の人は、変な命令と思えないんです。なぜなら、今まで私たちの問題をスパッと解決してくれていたコンピューターがおかしなことを言うなんて、そう考えることが「おかしい」ことだから。
疑う人がいなかったので、コンピューターは「車を運転していて、おカバさまが目の前に現れたら、車から降りておカバさまにひざまずくように。」というような命令まで出しはじめ、人々はそれを真面目に守って、おカバさまに無礼なことをした人を取り締まるための専用の警察まで作ってしまうに至ります。その結果、車は乗り物としての機能を果たさなくなって、みんなが車に乗らなくなり、世界を悩ませていた排気ガスの問題が解決されるという良いことが起こります。「おお、よかったよかった!しかし、環境が良くなったおかげで、どんどんおカバさまの数が増えていく一方なのだが…さすがにこれはおかしいのでは?」とおカバさまの数が増えすぎたことで、やっとコンピューターを疑いはじめる人が出てきた矢先に、なんと!家畜(私たちがいつも食べている、牛や豚やニワトリなどのこと)がみんな死んでしまう感染症が世界的に大流行するんですね。
困った人々は、コンピューターに解決策を質問します。すると、コンピューターは一言。「心配はいらない、カバを食えばいいのだ!」なんとなんと、人類の食べ物の危機は回避されたわけです。コンピューターはあらゆる情報をもとに、この危機を予知していたのだ!と、ますますコンピューターへの信頼感を強めていく人々…。しかし、実はこの命令を下したあとで、コンピューターの回線に、ちょっとした乱れが生じていたのでした…。さあ、次なる命令はどうなることやら…。ここからは、あまりにあざやかな最後なので、H松の口からは決して話せません!!楽しみが減ってしまいますからね。この物語の衝撃のラスト、みなさんご自身で確認してみてくださいね!
作者の星新一さんについての豆知識
星新一さんは、医療(病気を治すこと)に関わりの深い作家でもあります。ここからは少し長いお話になってしまうのですが、H松は星新一さんの人生も含めて、「星新一さんの作品」が好きなので…ここで豆知識を語らせてくださいね。
まず、星新一さんの大叔父に、お医者さんでもあり、とても有名な作家でもある森鴎外さんがいます。森鴎外さんの代表作に高瀬舟という作品があるのですが、その作品では、病気に苦しみながら死をむかえようとしている人を、少しでも楽に死ねるようにと殺してしまうことが罪なのかという、医療のありかたを考えさせられるようなとても重い問いかけがなされています。
そして、お父さんの星一さんは、星製薬という薬の会社の社長さんです。星製薬は、日本の会社ではじめてチェーンストア方式という売り方をアメリカから取り入れ、自分の工場で作った薬を全国の星製薬のお店で買えるようにしたことで大成功した会社でした。さらに当時、世界中で大流行していた、天然痘と言われる病気のワクチンの製造にも成功し、「東洋一の製薬会社」と言われるまでに成長した会社でもありました。星一さんは、会社で得たたくさんのお金を、フリッツ・ハーバーさんという、植物の成長に役立つ肥料を人工的に作る技術に貢献しノーベル賞を受賞した科学者に寄付することで、人の役に立つ研究をお金の面から支えていたそうです。(ただし、フリッツ・ハーバーさんの研究によってもたらされた技術については、肥料を人工的に作れるようになって人の役に立った面もある一方、爆弾の原料を空気から作れてしまうようにもなって、たくさんの人を殺すことに役立ってしまったという悲しい面もあります。)
星新一さんは作家になる前、なんと24歳でお父さんの会社を継いで、社長として働いていました。
星新一さんの作品には、お医者さんが登場する話や、新しい技術をめぐって混乱が起こってしまう話がたくさんあります。これらのお話は、もしかすると子どものころに身近でお医者さんや研究を仕事にしている人の悩みを見たり聞いたりした経験が元になっているのかもしれませんね。
余談ですが…
物語には、書いた人の想いがこめられています。書いた人には、それぞれ、どんな風に生きてきたかという歴史があります。生きていく中で、色んな人と出会ったり、物を見たりすることで、「こういうことって、大切だよなあ」と思うポイントが生まれてくるものです。物語を書く人は、自分が大切だと思ったことをみんなに伝えようと考えて、物語を書いているというわけです。
だから、本を書いた人がどんな環境でその本を書いたかということを知ると、「もしかしたら、この出会いがこの作品のこの部分のヒントになったのかも?」という、ワクワクにもつながります。
医療(病気を治すこと)に関わりが深かった星新一さんという人が、どのように社会を見て、自分なりに考えたのか、探りながら読んでいくのも、本を読む楽しみ方の1つかな?とH松は思っています。