第3回『ハリーポッターと賢者の石』(K原)

さんかくすと文がえます

本日の紹介者

K原
K原

英語のナビゲーター・デスクのK原です。

リレーも私で3人目、皆さんそれぞれ、思い入れのある本がありますね!

M先生が紹介しているシャーロック=ホームズシリーズは、現代の日本の作品にも大きく影響を与えていますよね。例えば名探偵コナンはホームズオタクの主人公が登場しますし、それだけではなく「ホームズ・フリーク殺●事件」などホームズファンのお話や、「緋色」シリーズなどシリーズのタイトルのオマージュ、コナンが住む町は米花町と書いて「べいかちょう」…などなど、調べれば調べるほど見つかりそうです。

小さい頃の経験がその後の自分の核になったりするのかもしれないと思うことがありますが、M先生の’ホームズごっこ’はこれまで見聞きしていたものを別の視点から見たり、全くつながりを感じられなかったものに関係性を見出したり、楽しみながら学びも深められそうです。

さて、私も「自分の世界を拡げた作品」を紹介したいと思います。イギリスの作家つながりです。とても有名な作品なので、ご存知の方も多いかもしれません。

ハリー・ポッターと賢者けんじゃいし

著者ちょしゃ:J・K・ローリング

翻訳者ほんやくしゃ:松岡佑子

サピエ 点字てんじデータ:あり サピエ デイジーデータ:あり

出版社しゅっぱんしゃ静山社せいざんしゃ

出版年しゅっぱんねん:原著:1997 日本語版:1999

ISBNコード:978-4915512377

概要

赤ちゃんの頃に両親を亡くし、自らの出自を一切知ることなく、親戚一家に冷たくあしらわれてきた少年 ハリー・ポッター の物語です。舞台はイギリス、そして魔法界です。11歳の誕生日に自分が実は魔法使いであることを知らされ、ホグワーツ魔法魔術学校へ入学し、人生が変わっていきます。また自らの両親を殺害した、闇の魔法使い・ヴォルデモート卿との因縁を知り、シリーズを通して対決することになります。

ほんとの出会であ

ごめんなさい、よく覚えていません。完全に余談で本との出会いでもなんでもないですが、友人とよく『ハリー・ポッター』の話をしながら給食の列に並んでいた覚えがあります。

当時小学生の私は、この作品に描かれる魔法界に強烈な魅力を感じました。

例えば、「9と3/4番線」なんていう名前のプラットフォームや、魔法学校への列車「ホグワーツ急行」内で売られている「百味ビーンズ」「蛙チョコ」「ナメクジグミ」などの魔法界の食べ物、魔法学校での授業(絶対みんな「ウィンガーディアム・レビオーサ」やったと思う)、魔法使いが持っている自分だけの杖や、そこから繰り出される魔法、「透明マント」、そして魔法学校のクラス(組)を告げる「組み分け帽子」など魔法界の道具や、魔法学校の寮に住むゴースト、巨人・トロール、そして3つの頭を持つ大きな犬・フラッフィーなど魔法動物の存在には、とても魅了されました。

また、これまで孤独だったハリーに、ロンとハーマイオニーをはじめとした友達ができたり、いつも見守ってくれる大人ができるなど、友人・人間関係も描かれます。ハリーの成長していく様子も(こそが)、シリーズの大きな魅力ですが、やっぱり上にあげた魔法界のいろいろは、私にとって強烈な印象を与えました。

もしも自分がホグワーツの生徒だったら…とよく考えていました。

このほんひろげた世界せかい

この作品は、魔法界という別の世界への想像を広げてくれました。自分とは違う世界に住む人々について考えたり、その人々が暮らしている環境に対して、初めて興味を持ったといってもいいかもしれません。特に当時小学生だったこともあり、11歳のハリーが学ぶホグワーツ魔法学校がどんなところか、書かれている内容を手掛かりに、様々に想像をした覚えがあります。

意地悪な親戚の家の、階段下で生活していたハリーですが、11歳になり、ホグワーツ魔法学校で生活することになります。

ホグワーツ魔法学校は、全寮制(家から通うのではなく、学校の寮で生活すること)です。寮は4つに分かれており、それぞれに特徴があります。「組み分け帽子」によって入る寮が決まるので、よく「自分はどこの寮に入(れ)るか」を考えました。魔法学校なので、授業も全く違います。

ハリーが受けた1年生の教科はこのようなものでした。

  • 基本呪文集
  • 魔法史
  • 魔法論
  • 変身術入門
  • 薬草ときのこ千種
  • 魔法薬調合法 
  • 幻の動物とその生息地
  • 闇の力 – 護身術入門

このように、少なくとも私が受けてきた授業と同じ授業はひとつもありませんでした(当たり前だけど)。その世界(社会)の状況によって、何を学ぶことが重要と考えられるのか違うということがわかる…かもしれません。

また、当時は魔法界について「なぜ魔法族とマグル(純血の魔法族ではない人のこと)はこんなに言い合っているのか。なんでマルフォイ(という名前の、ハリーの同級生)はこんなに偉そうにしているのか」くらいにしか感じていませんでしたが、これは現実の社会で起こっている、人種差別につながる設定だったのだと今となっては思います。

さらに、この作品は「翻訳」への世界を開いてくれた作品でもあります。記憶ではこの『ハリー・ポッターと賢者の石』が、翻訳版を読んだ最初の本です。「翻訳」によって、異言語で書かれた異世界についても知ることができるのだと思いました。

教科きょうかとの関連(英語と日本語の一人称)かんれん

ハリーポッターシリーズの日本語訳については、様々な議論がされているようですが、そのうち一人称”I”の訳が、論点の1つになっているようです。

英語は自分のことは ”I” と一種類で表現しますが、日本語では「僕」「わたし」「俺」「俺様」「ワシ」「我輩」など様々です。どの言葉を選ぶかによって、その登場人物に対するイメージも大きく変わってきます。

この主語 “I” の訳し方には、日本語と英語の違いがよく現れていると思います。英語と日本語とでは、一人称「わたし」のレパートリーがこんなに違うんですね。なぜこんなに日本語には一人称が多いのか、また日本語にはどのような一人称があるか、調べてみると自由研究の題材になりそうです。

他にも英語の原書と日本語版を比較しながら読めるという場合は、日本語と英語の違いを感じながら読み進めることができるかもしれません。

また、第1巻『ハリー・ポッターと賢者の石』から、第4巻『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』までの映画の字幕翻訳は、津田塾の先輩である戸田奈津子さんが担当されています。

小説の翻訳と映画の字幕翻訳を見比べて違いを楽しんでみたり、洋書にチャレンジして自分だったらどう訳すか考えてみるという楽しみ方もできそうです!

  

  

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