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こんにちは!まなキキ社会科担当のたじみです。今回は、ニュースでも話題になっているヤングケアラーについて、①ヤングケアラーとは何か、②ヤングケアラーの数とヤングケアラーの仕事、③ヤングケアラーの支援の3つに分けて紹介します。この記事を読んだ皆さんが、ヤングケアラーについて深く考えるきっかけになれたら嬉しいです
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ヤングケアラーとは

そもそも、「ヤングケアラー」とはどのような人たちのことを指すのでしょうか?このページでは、ヤングケアラーについて詳しくご紹介します。
1.ヤングケアラーの定義
2000年(平成12年)に介護保険制度が実施されるまで、日本では長い間「介護は家族が担うもの」という価値観が浸透していました。そのため、もし家族に介護や日常的な支援を要する人がいた場合、家族が全ての面倒を見ることが「普通」とされていたのです。特に、子どもたちは年齢や成長の度合いに見合わない負担を背負うケースが多く、勉強や友達と接する時間が確保できない状況でした。このような「本来大人が担うと想定されている家事家族の世話などを日常的に行っている子ども」たちのことを、ヤングケアラーといいます。
2.ヤングケアラーの数とヤングケアラーの仕事
ヤングケアラーの数については、埼玉県が2020年に県内の全高校を対象に行った調査では、回答者4万8261人のうち、4.1%にあたる1969人がヤングケアラーという結果が出ました。埼玉県内の高校生の25人に1人がヤングケアラーであるとされ、クラスに1人はヤングケアラーの子どもがいる計算になります。
また、2020年12月~2021年1月にかけて、厚生労働省と文部科学省が全国の公立中学校1000校と全日制の高校350校を対象にヤングケアラーの実態調査を行いました。今年の4月に発表された調査結果によると、「世話をしている家族がいる」という生徒の割合は、中学生が5.7%でおよそ17人に1人、全日制の高校の生徒が4.1%でおよそ24人に1人でした。
他にも、規模を縮小したうえで、定時制高校と通信制高校にも同様の調査を行ったところ、「世話をしている家族がいる」という生徒の割合は、定時制高校が8.5%でおよそ12人に1人、通信制高校が11%でおよそ9人に1人と、いずれも全日制の4.1%を上回っていたそうです。

介護保険制度とは、1997年(平成8年)に制定された介護保険法を基に、2000年(平成12年)に施行された社会保険制度です。1990年代まで、介護費用は医療保険でまかなわれていましたが、①高齢化により介護の長期化が進み、莫大な医療費がかかっていること、②核家族の増加にともない、家族にとって介護が多大な負担となっているという問題が起きました。これらの問題を解決するために、考案された新たな社会保険制度が介護保険制度です。介護保険制度の目的は、医療費の負担を軽減することと、介護を病院や家族だけに押し付けるのではなく、社会全体で担うことです。「介護」という言葉から「おじいちゃん、おばあちゃんが入る保険」と思われがちですが、介護保険料の支払いが始まるのはなんと40歳から!現役世代のうちから、介護に備える制度なんですね。

ちょっと話が脱線してしまいましたが、介護保険制度は、ヤングケアラーの根底にある「介護は家族が担うもの」という考えを問題視し、新たに「介護は社会全体が担うもの」という考えを社会に広めるきっかけとなった制度です。介護保険制度についてもっと知りたい!という方はこちらのページをご覧ください!(まなキキ外部サイトへ移動します)
話をヤングケアラーに戻しましょう。一般社団法人日本ケアラー連盟さんは、ヤングケアラーについて次のように説明されています。
◎ヤングケアラー(子どもケアラー)
家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子どものことです。ケアが必要な人は、主に、障がいや病気のある親や高齢の祖父母ですが、きょうだいや他の親族の場合もあります。
一般社団法人日本ケアラー連盟 ヤングケアラープロジェクト 「ヤングケアラーとは」
また、ヤングケアラーの子どもたち、若者たちが担う仕事についても解説されています。
◎子どもたち、若者たちが担っていること
・家事:料理や洗濯、掃除など
・一般的なケア:投薬管理、着替えや移動の介助など
・身辺ケア:入浴やトイレの介助
・きょうだいの世話:世話、見守り
・その他:金銭の管理、通院の付添い、家計を支えるための労働、家族のための通訳など
一般社団法人日本ケアラー連盟 ヤングケアラープロジェクト 「ヤングケアラーとは」

このように、ひとくちにヤングケアラーといっても、その「ケア」の内容は多様です。また、ケアの対象には、障がい者や高齢者以外に、外国にルーツをもつ人も含まれていることが分かります。しかし、ながら、家族のケアに時間が割かれ、勉強や友達と遊ぶ機会が得られず、周囲から孤立しやすい傾向があることは共通しています。
ヤングケアラーへの支援

ヤングケアラーが社会問題として取り上げられたのは最近の出来事ですので、ヤングケアラーの調査や支援についてはまだ模索中というのが現状です。しかし、現在進行中で様々な取り組みが行われているので、ご紹介いたします。
1.「中高生のかたり場」(ケアラーアクションネットワーク)
一般社団法人ケアラーアクションネットワークでは、「家族の世話や介護を家族だけで抱え込まずに自分の人生を自分らしく生きることができる社会づくりを目指す」ことを目標にヤングケアラーや家族の介護を担う人々の支援活動を行っています。具体的には、毎月2回、Zoomで「中高生のかたり場」を開催し、ヤングケアラー同士が悩みを共有し、自分の将来について考えるプログラムを提供されています。「中高生のかたり場」に参加したい、興味があるという方は、こちらからどうぞ!(まなキキ外部サイトへリンクします)

2.ケアラー支援条例(埼玉県)
ケアラー支援の動きは、行政にも見られます。埼玉県は、全国の自治体に先駆けて2020年3月に「ケアラー支援条例」を県議会で可決、施行しました。週刊高齢者住宅新聞Onlineさんの記事をお借りしながら、条例の内容を見てみましょう。
同条例では、「ケアラー」について、「高齢、身体上又は精神上の障害又は疾病等により援助を必要とする親族、友人その他身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活上の世話その他の援助を提供する者と定義。特に18歳未満の人については「ヤングケアラー」とし、適切な教育の機会を確保し、心身の健やかな成長、発達ならびにその自立が図られるように、支援を行わなければならないと強調している。
週刊高齢者住宅新聞Online 「全国初、ケアラー支援条例施行/埼玉県」
また、ケアラー支援は企業、民間支援団体が協力して行う必要があるとしています。
県は、市町村や事業者、関係機関、民間支援団体などと連携してケアラーを支援。このうち、事業者に対しては「雇用する従業員がケアラーである可能性があることを認識するとともに、当該従業員がケアラーであると認められるときは、ケアラーの意向を尊重しつつ、勤務するに当たっての配慮、情報の提供その他の必要な支援を行うよう努めるものとする」と明記。いわゆる「介護離職」などにつながらないよう、従業員に対する配慮を求めている。
週刊高齢者住宅新聞Online 「全国初、ケアラー支援条例施行/埼玉県」

また、教育機関に対しても、ヤングケアラーへの支援を求めています。
1 ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関は、その業務を通じて日常的にヤングケアラーに関わる可能性がある立場にあることを認識し、関わりのある者がヤングケアラーであると認められるときは、ヤングケアラーの意向を尊重しつつ、ヤングケアラーの教育の機会の確保の状況、健康状態、その置かれている生活環境等を確認し、支援の必要性の把握に努めるものとする。
2 ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関は、支援を必要とするヤングケアラーからの教育及び福祉に関する相談に応じるとともに、ヤングケアラーに対し、適切な支援機関への案内又は取次ぎその他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
埼玉県ケアラー支援条例 第8条(ヤングケアラーと関わる教育に関する業務を行う関係機関の役割)

家族のケアは、ケアラーにとって学ぶ機会と働く機会を奪いかねない大きな負担です。そのため、事業者と学校側もケアラーの状況を把握し、勤務や学習にあたって配慮するよう「ケアラー支援条例」は定めています。

埼玉県などの地方自治体のヤングケアラー支援を受けて、国も2021年5月中に相談窓口の拡充を行うなど、この記事を書いている間にも、ヤングケアラー支援の動きがありました。また、ここで紹介した民間団体や行政だけではなく、この記事を読んでいる皆さんにも、ヤングケアラーに寄り添うことはできると私(たじみ)は考えています。ヤングケアラーの方たちが何を必要としているのか、思いを巡らせていただけると嬉しいです!下の感想フォームにも、皆さんの意見をどんどん書いてくださいね!
一般社団法人ケアラーアクションネットワーク協会. 「ヤングケアラー支援」<https://canjpn.jimdofree.com/%E6%B4%BB%E5%8B%95%E5%86%85%E5%AE%B9/%E3%83%A4%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B1%E3%82%A2%E3%83%A9%E3%83%BC%E6%94%AF%E6%8F%B4/>
一般社団法人日本ケアラー連盟.「ヤングケアラーとは」<https://youngcarerpj.jimdofree.com/>
公益社団法人国民健康保険中央会.「介護保険制度」<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html>
厚生労働省. 2018.「公的介護保険制度の現状と今後の役割」<https://www.mhlw.go.jp/content/0000213177.pdf>
埼玉県. 2020.「埼玉県ケアラー支援条例」<https://www.pref.saitama.lg.jp/a0609/chiikihoukatukea/jourei.html>
産経新聞. 2021.「国がヤングケアラーを支援 相談窓口拡充、5月中に提示(2021年5月3日)」<https://www.sankei.com/life/news/210503/lif2105030024-n1.html>
澁谷智子. 2021.「ヤングケアラー なぜ子どもがケアを担うことになるのか」<https://www.mhlw.go.jp/content/11907000/000753054.pdf>
週刊高齢者住宅新聞Online. 2020.「全国初、ケアラー支援条例施行/埼玉県」<https://www.koureisha-jutaku.com/newspaper/synthesis/20200415_04_2/>