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みなさん、こんにちは。演劇や映画を見るのが大好きなH松です。
前回の「演劇・映画から学ぶ社会」の記事のなかで
COVID-19で劇場がお休みになってしまったことについて少しお話しました。今回はその話を少し詳しくみなさまにお伝えしたいと思います。映画と演劇の2つをこれから語っていきますが、まずは演劇におこった状況について、整理します。
演劇を行う劇場がお休みになった日。
COVID-19が流行して、日本の劇場がお休みになっていった歴史をまとめてみました。下の表は、みなさんだけではなく、みなさんの周りの大人にも見てもらい、みんなで社会の問題として考えられるように、少しだけ難しい日本語で書いています。表のなかに、H松なりの「これはこうなんじゃないかな?」と思ったことを書いているので、表を見るヒントにして、ちょっと考えてみてくださいね。
- 2020年2月26日(1)北海道知事が臨時会見を開き、2月27日から3月4日まで北海道内のすべての小中学校を休校(お休み)にすると発表
(2)萩生田光一文部科学大臣が会見を開き、全国のスポーツ団体や文化団体に3月15日までのイベントや公演の自粛(お休みのお願い)を求める
(3)国立劇場が2月28日~3月15日までの全公演中止を決定
(4)劇団四季が2月27日~3月8日までの全公演中止を決定※(2)について…会見の中で、国立博物館に休館、国立劇場には公演中止を求めたと説明がなされています。
- 2020年2月27日(1)日本政府が全国の小中高校に休校要請(お休み依頼)をする
(2)松竹株式会社が2月28日~3月10日までの歌舞伎座・新橋演舞場・大阪松竹座のお休みを決定
(3)宝塚歌劇団が2月29日~3月8日までのお休みを決定※(1)について…安倍首相が全国の小中学校と高校、特別支援学校に3月2日から春休みまでの臨時休校をお願いする会見を開きました。
H松みんなの学校がお休みになるタイミングで、劇場も次々とお休みになったんだなあ…。
H松それぞれの劇場ごとに、どのくらいお休みをするかどうかの長さがちがうんだね。
H松の
祖父お休みになるタイミングは、ほぼ同じじゃったが、どれくらいお休みにするかは、それぞれの劇団の判断にまかされていたんじゃ。同じ作品を長い間上演する劇団もあれば、違う作品を短期間で上演する劇団もある。ファンをがっかりさせないように、それぞれの劇団がお休みの長さをどうしようか、悩みながらお休みを発表したんじゃ。
- 2020年3月9日宝塚歌劇団が上演を再開
劇場の換気扇をすべて動かして、空気の入れ替えを徹底したり、入り口で体温を図る検査をしたりして、感染の危険性を限りなく減らす努力を行い、上演を再開しました。
H松でも、他の劇場がみんなお休みをしている中で、「宝塚だけ再開するのはおかしいのでは?」「COVID-19がひろまってしまうのでは?」と、ニュースでは再開に反対する意見も伝えられていたんですよね。
H松の
祖父それに、このころは、まだ、日本全国の感染者数は101名(ダイヤモンドプリンセス号の乗船者をのぞく)だったのう。じゃが、3月6日には、大阪のライブハウスでたくさんの感染者がでて、せまい場所にたくさんの人が集まることに対して、批判の声が上がっていたんじゃ。そんな雰囲気の中、2000人以上が同じ空間に隣り合って座るなんて…とんでもない!という意見が出てきたんじゃなあ。
- 2020年3月10日宝塚歌劇団が休演を決定H松
前日に再開した宝塚でしたが、上演の自粛(なるべくひかえて下さいというお願い)を受けて、次の日には休演を発表しました。
H松の
祖父たった1日のみ上演し、次の日にはまたお休みを決定したということに対して、「それだったらずっとお休みにしたらよいのに」という批判の声がニュースで流れていたのう。
H松そうだったなあ。その声をうけて、流行の様子をみながら再開をするのではなく、4月までは上演をお休みにしようという判断をした劇団もありましたねえ。
- 2020年3月20日東宝株式会社が帝国劇場での作品上演を3月末まで中止と発表
- 2020年3月22日宝塚歌劇団が東京宝塚劇場での千秋楽公演を行う
- 2020年3月26日劇団四季が4月12日までの全公演を中止と決定
- 2020年4月7日日本政府が7都府県に「緊急事態宣言」を発令
埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県に緊急事態宣言が出され、5月6日までは、みんなで「密閉、密集、密接の3つの密を防ごう」というお願いがなされました。
H松政府からのお願いにこたえる形で、劇団の多くが5月6日までの公演を中止としたんですね。
H松の
祖父4月になれば、演劇を再開できるのではないか?と考えていた人たちもいたのじゃが。残念なのことに、4月に入ってCOVID-19の流行がさらに広まってしまったからのう…。思いがけず、演劇ができない期間がのびてしまったんじゃ。
- 2020年4月16日「緊急事態宣言」が全国に拡大される
7都府県だけでなく、日本のどこでも「緊急事態」になったことで、日本全国の劇団が5月6日までの上演を見送ることになりました。みなさんのまわりのお店がしまったり、みなさんの家族が家でお仕事をするようになったとき、日本全国の演劇の場は「お休み」になったのです。
演劇を仕事にしている人たちが行った取り組み
演劇を仕事にしている人たち(役者さん、監督さん、舞台に使う道具を作る大道具さんや小道具さん、舞台のライトを操作する照明さん、舞台の音を操作する音響さんなど)は、劇場がお休みになっている間、ただ家にいてのんびりと寝ていたわけではありません。劇場の再開を楽しみにしているファンのために、YouTubeやインスタグラムなど、インターネットを通じて自分の生活を発信したり、劇の中の歌をみんなで歌ったり、COVID-19と闘っているエッセンシャルワーカーを応援したり、お金は一切入ってこないにも関わらず、夢を与える仕事をしている舞台人として今できることを行っていたのです。たとえば、こんな取り組みがありました。
応援動画の配信
劇団四季さんが、SNSで「♯明けない夜はない」と、応援メッセージを配信するキャンペーンを行ったり、宝塚歌劇団がInstagramで毎日日替わりで役者からのメッセージを届けるキャンペーンを行ったりと、再開を待つファンの心を癒す取り組みが様々な劇団で行われていました。
過去の作品の無料配信
松竹株式会社さんが、歌舞伎を無料で観ることができる番組をYouTubeに配信したり、日本芸術文化振興会さんが「おうちでカンゲキ!!」というサイトを作って、過去作品の一部の動画を配信したりと、家でも演劇に触れることができる機会を提供しようとする取り組みが行われました。
リモート合唱
ミュージカルに主演している役者さんたちが、自宅で歌を歌っている姿を録画し、その映像を編集することで、合唱のようにする取り組みが行われました。ファンはもちろん、社会を守るために働いているエッセンシャルワーカーの皆さんを応援しようという、あたたかな取り組みに、感動が広がりました。
YouTubeから無料でみれます!
それらの動画は、6月1日の時点では、まだ無料で公開されています。よかったら皆さんも聞いてみてください。
(1)【Shows at Home】民衆の歌
フランス革命の時代を生き抜く人々の生きざまを描いた名作ミュージカル、レミゼラブルの有名な曲、「民衆の歌」を歌ったプロジェクトはこちらから確認できます。(本当に残念ですが、字幕はありません…。)
(2)劇団四季:友だちはいいもんだ
劇団四季に所属する役者さんが、テレワークで、劇団四季のオリジナルミュージカル『ユタと不思議な仲間たち』の曲を歌ったプロジェクトです。(こちらも、残念ながら字幕はありません…。)
(3)宝塚OGその1:【すみれプロジェクト】すみれの花咲く頃
宝塚歌劇団を卒業し、それぞれの人生を歩んでいるOGのみなさまが、医療従事者ならびに休業できず働いていらっしゃる皆様(エッセンシャルワーカー)への感謝の言葉とともに、宝塚歌劇団を象徴する歌である「すみれの花咲く頃」を歌い繋ぐプロジェクトが行われました。
(4)宝塚OGその2:Our song for you -また会える日まで-『青い星の上で』
こちらも、元宝塚のトップスター(主役を務めていた人たち)があつまって、現役時代を思わせる組み合わせで歌をリモート合唱することで、自宅にいるファンや、世の中の人の心を癒そうとする取り組みです。
やあやあ、こんにちは。興味深い話だなあ…と思って、思わずやってきてしまったぞい。実は、ワシも演劇が大好きなのじゃ。ところで、ここまで、宝塚の話が多い気がするのじゃが??
あ、白衣博士。こんにちは。それはですね、ごめんなさい!完全なるH松の趣味です!!
(なんとまあ、こまった大人じゃ…。みんな、趣味はほどほど、にするんじゃぞう…。)
オンラインで生まれた、新しい演劇
お休みが長引くと、今までためていたお金だけでは生活ができなくなっていまいます。お金がなくなると、困ってしまいますね。そこで、最近、何とかオンラインで演劇を行い、チケットを販売してお金を稼ぐことができないだろうか?と考えた取り組みがいくつも始まってきました。演劇は今まで、舞台の上で行うものでしたが、完全にオンラインで行い、お金を稼ぐというビジネスモデル(仕事の作戦)が誕生し、演劇の当たり前を崩しつつあります。
【Zoom演劇】
オンラインのビデオアプリ、Zoomを使って行われる演劇のこと。Zoomをインストールし、自宅にオンライン環境があれば家でもリアルタイムの演劇を楽しむことができます。字幕が付かないのは残念ですが、Zoomの特性上、舞台背景を想像させるセリフが必要になってくるので、画面をみなくても、音だけでかなり楽しめるというのは面白い点だと思います。
Zoom演劇を行っている劇団さんの例:劇団Zooooom!さん。】
オンラインだからこそできる表現をたくみに探し、たくみに取り入れる。どんな環境でも、「楽しさ」を求め、芸術にしていく。人の想像力はすごいなあ、と思わされる取り組みです。
劇場の再開にむけて、課題とされていること
緊急事態宣言がいったん、解除になり、だんだんとみなさんの身の回りのお店が開きはじめているのに気がつきましたか?
劇場も今、上演の再開にむけた話し合いがすすめられています。
でも、そんななかで、課題(こまったなあ、と思うところ)がたくさん出てきています。
課題その1
劇場にやってきたお客さまの3密をどのようにさけるか問題。
劇場にいくと、隣の席がとても近いですよね。これは、一度にできるだけたくさんのお客さまを劇場にいれて、同じ作品を見てもらおうという、演劇というビジネスの作戦の一つです。劇を演じている役者さんは人間ですから、一日同じ作品を何度も上演するのは限界があります。だから、たくさんのお金をえるためには、同じ時間に見れる人をたくさんにしたほうが良いのです。でも、COVID-19によって、同じ場所にたくさんの人が、近くに集まることが難しくなってしまいました。「3密!」と言われる状態になってしまうからです。その状態にならないように間隔をあけてみんなが座ったとしても、入れる人数がとても少なくなってしまって、劇団に入るお金も少なくなってしまうのです。もちろん、みんながCOVID-19になってしまっては困りますから、これからどうしていくのか、考える必要があります。昔のようなやり方でやっていけるのか、多くの劇団さんが悩んでいます。
課題その2
役者同士の接触をどのようにさけるか問題。
劇を行うにあたって、ロマンチックなキスシーン(実際にしているかどうかはともかくとして)や、顔を他の役者さんに近づけて自分の怒りをあらわにするシーンは多々あります。今までの演劇では、どうしても、「濃厚接触」は避けられないのです。役者さんがマスクをすればよいのではないか?という意見もありますが、マスクをしたロミオとジュリエットや、マスクをして見栄を切る歌舞伎役者が見たいか?と言われると、演劇ファンとしては少し違和感もあります。激しく舞台上をかけまわるような作品で、役者さんがマスクをするのは負担ではないか?と、役者さんの体力を気にする意見もあります。どのようにしていくべきか、これから色々な話し合いが行われていくことだと思います。
次のページでは、H松の余談(とてもとてもマニアックなお話)をお届けします。