オノマトペと俳句―オノマトペとは―【前編】

さんかくすと文がえます

「キラキラ」、「しゅわしゅわ」、「ドキドキ」などといったモノの状態じょうたいを表す言葉は、モノの状態をより細かく表現できるものとして、マンガや小説しょうせつだけでなく、私達の日常会話にちじょうかいわにおいても度々たびたび登場します。このような言葉ことばは、「オノマトペ」と言い、日本古来のものである俳句はいくにも度々たびたび登場とうじょうします。しかしながら、オノマトペには「擬音語ぎおんご」や「擬態語ぎたいご」など様々さまざま種類しゅるいがあることをご存知ぞんぢでしょうか?今回こんかいは、そんなオノマトペについて紹介します。

オノマトペとは

国立国語研究所こくりつこくごけんきゅうじょによると、オノマトペとは、「きらきら」「さくさく」などのように、モノの状態じょうたいをより細かく表す言葉の総称そうしょうのことを言うそうです。また、オノマトペにはいくつかの種類があり、「擬音語ぎおんご」「擬態語ぎたいご」「擬声語ぎせいご」「擬容語ぎようご」「擬情語ぎじょうご」の五つに分けられます。

擬音語ぎおんご

自然界しぜんかいおと物音ものおとあらわします。たとえば、「かみなりごろごろる」の「ごろごろ」や「電話でんわガチャンと切る」の「ガチャン」などがあります。

雷雲のイラスト
怒って電話をガチャンと切ってしまう人のイラスト
擬声語ぎせいご

動物どうぶつや人の声を表します。例えば、「犬がワンワンえる」の「ワンワン」、「ペチャクチャしゃべる」の「ペチャクチャ」などがあります。

犬がワンワン吠えている様子に動揺している男性
授業中に喋っている小学生のいらすと
擬態語ぎたいご

音ではなく何かの動きや様子ようすを表す言葉の中で、生き物ではないモノの状態を表します。例えば、「ふわふわくも」の「ふわふわ」、「カチカチの氷」などがあります。

空に浮かぶ雲のイラスト
氷のイラスト
擬容語ぎようご

生き物の状態を表します。例えば、「カメがゆっくりと歩く」の「ゆっくり」、「女の子がにこにこわらう」の「にこにこ」などがあります。

カメが歩いているイラスト
微笑んでいる女性のイラスト
擬情語ぎじょうご

人の気持ちやいたみなどの感じ方を表します。例えば、「心臓しんぞうズキズキと痛む」の「ズキズキ」、「明日の旅行りょこうが楽しみで、ワクワクする」の「ワクワク」などがあります。

胸に手を当てて、心臓を痛がっている男性のイラスト
浮かれる女性のイラスト


ここで、読者どくしゃ皆様みなさまの中には、このような疑問ぎもんいだいたかたもいらっしゃるのではないでしょうか。

あれ、『ごろごろ』という言葉が擬音語ぎおんご分類ぶんるいされているけど、『ごろごろ』という言葉は「目がごろごろする」という文では、擬音語ぎおんごじゃなくて擬情語ぎじょうごとして分類することもできるんじゃない?こういうふうに、オノマトペの中には、一つだけじゃなくて、複数ふくすう分類ぶんるいに当てはまるものもあるんじゃないの?


そう思った方、大正解だいせいかいです。

何と!ある一つのオノマトペが、「擬音語ぎおんご」「擬態語ぎたいご」「擬声語ぎせいご」「擬容語ぎようご」「擬情語ぎじょうご」の五つの分類のうち二つ以上に当てはまることもあるそうです。例えば、「からから」という言葉は「洗濯物せんたくものからからかわく」という意味いみ使用しようする場合ばあい、「擬態語ぎたいご」の分類ぶんるいになります。しかし、「風車かざぐるまからからと音を立てて回る」という意味いみ使用しようする場合ばあいは、「擬音語ぎおんご」の分類ぶんるいになります。文法ぶんるい比較的ひかくてき柔軟じゅうなんな日本語だからこそ、このような現象げんしょうが起きてしまうんですね。また、オノマトペによっては、どの分類ぶんるいぞくするのかが曖昧あいまいなものもあるそうです。

コラムー「擬音語・擬態語」にはどんな種類がある?ーhttps://www2.ninjal.ac.jp/Onomatope/column/nihongo_1.html

オノマトペの注意点

何かをオノマトペで表したい場合、そのモノの特徴とくちょう雰囲気ふんいきに合った適切てきせつな表現を選ばなければ、聞き手や読み手が受け取るモノの印象いんしょうが変わってしまい、自分の伝えたい気持ちや考えが正しく伝わらないことがあります。

例えば、

たけし
たけし

おかかさん!僕、昨日とっても美味しいうめおにぎりを食べたんです

おかか
おかか

へ~✨どんな梅おにぎりを食べたの??

たけし
たけし

見た目は普通ふつうの梅おにぎりなんですけど、一口食べた瞬間しゅんかんぬちょぬちょとした梅干うめぼしの酸味さんみぶよぶよのお米の甘味あまみが口いっぱいに広がって、本当に美味しかったです!

↑たけしさんが食べた梅おにぎり

おかか
おかか

へ、へぇ。私も食べてみたいなぁ。

(何だかまずそうに聞こえるなあ。

もしかしてこんな感じのおにぎりを食べたのかな)

おかかさんは、たけしさんが食べた梅おにぎりを「まずそう」と感じてしまいました。たけしさんは、自分が感じたあじ素直すなおに「ぬちょぬちょ」や「ぶよぶよ」といった言葉で表現ひょうげんしましたが、これらの表現ひょうげんは食べ物に対してあまり良い印象いんしょうあたえないことがおおいため、おかかさんには梅おにぎりのおいしさがうまく伝わらなかったようです。(人によっては「ぬちょぬちょ」や「ぶよぶよ」という単語を聞いて、「美味しそう」と感じる方もいるかもしれませんが・・・。)

このように、オノマトペは、表現ひょうげんしたいモノの様子ようすに合わせて使用しようしなければ、話し手と聞き手の間でそのモノに対する解釈かいしゃく理解りかいにズレをしょうじさせてしまいます。

おかか
おかか

相手に自分の好きなモノがどのようなモノなのかが伝わると嬉しいですよね。
ぜひ皆さんも、自分の好きな食べ物の味をオノマトペを使って紹介してみてください!

やってみよう

次の文章ぶんしょうの(  )に当てはまるオノマトペをえらんでください。

カエルが(  )と鳴く

「ゲロゲロ」は、カエルの鳴き声を表したり、激しく嘔吐おうとする様子を表すオノマトペです。この文におけるゲロゲロは、生き物の鳴き声を表す擬声語分類ぶんるいされます。( )の中にこのオノマトペを入れると、この文を読んだり、聞いたりする人が文の内容をよりくわしくイメージ出来そうですね!

「ピョンピョン」は、生き物がねる時に使う擬容語ぎようごです。問題文もんだいぶんの( )の後ろには、「鳴く」という生き物の音にかんする言葉が置かれています。「ピョンピョン」という擬容語を入れると、この文を読んだり、聞いたりする人によってはカエルがどのように鳴いているのかがイメージしにくいかもしれません。

「ズキズキ」は、いたみなどを表す擬容語ぎようごです。問題文もんだいぶんの( )の後ろには、「鳴く」という生き物の音に関する言葉が置かれています。「ズキズキ」という擬容語を入れてしまうと、この文を読んだり聞いたりした人によってはカエルがどのように鳴いているのかがイメージしにくいかもしれません。

が(  )といきおい良く押しせる。

「ぽつぽつ」は、雨が少しずつる様子や物が点在てんざいしている様子、物が進む様子を表します。問題文の( )に「ぽつぽつ」を入れると、この文を読んだり聞いたりする人が文の内容をイメージしにくいと感じてしまうかもしれません。今回は、波がいきおい良く押し寄せる様子を表す擬態語擬音語である「ザブーン」を当てはめるのが、自然だと考えられます。

「ヌメヌメ」はヌメりっ気があるものを表す擬態語ぎたいごです。このオノマトペを( )に入れると、人によっては、問題文の波に対して「がけの上のポニョ」に出てくるような波の様子を連想れんそうしてしまうかもしれません。

「崖の上のポニョ」に登場するヌメヌメとした波
↑「崖の上のポニョ」に登場する波

もし、この文を作成さくせいした人が葛飾北斎かつしかほくさいの「冨嶽三十六景《神奈川沖浪裏》ふがくさんじゅうろっけい かながわおきなみうら」のような波がいきおい良く押し寄せる波を表したいのだとしたら、その様子を表す擬音語または擬態語の「ザブーン」を( )に当てはめるのが良いかもしれません。

「冨嶽三十六景《神奈川沖浪裏》
↑「冨嶽三十六景《神奈川沖浪裏》

「ザブーン」は、波がいきおい良く押し寄せる様子、又は音を表す擬態語、擬音語です。このオノマトペを( )に当てはめることで、波が勢い良く押し寄せる様子を表すことができます。

散歩中さんぽちゅうに雨が突然とつぜんってきたため、服が(   )になった。

「もじゃもじゃ」は、体毛や草木が乱雑らんざつに、たくさん生えている様子を表す擬態語ぎたいごです。このオノマトペを( )に入れると、服が雨に濡れた結果、「もじゃもじゃ」になったという、SF感溢れるあふ文章になります。もしかしたら、この文の読み手、または聞き手によっては、その様子をイメージしにくいと感じる人がいるかもしれません。

ボーダー模様のもじゃもじゃな服
もじゃもじゃな服

問題文から、突然雨とつぜんあめが降ってきて服がどうなったかという様子を表そうとしていることがわかるため、この場合、選択肢せんたくしの中では濡れている様子を表す「びちょびちょ」をもちいるのが自然しぜんだと考えられます。

「びちょびちょ」は、水などの液体にれたモノの状態を表す擬態語ぎたいごです。( )の中にこのオノマトペを入れれば、違和感なく「突然雨が降ってきたことで、服がれた」というニュアンスの文を作ることができます。

「しとしと」は、雨がしずかにっている様子を表す擬態語ぎたいごです。そのため、( )の中にこのオノマトペを入れてしまうと、不自然ふしぜんな文になってしまいます。

まとめ

文の内容をより分かりやすくしてくれるオノマトペは、日常会話にちじょうかいわ小説しょうせつなど、様々さまざま場面ばめんで使用されています。このオノマトペは、日本最古にほんさいこ書物しょもつ古事記こじき」にも使用されており、古くからしたしまれてきました。次回は、そんなオノマトペを使用した俳句はいくについてご紹介しょうかいします。

おかか
おかか

私達わたしたちが当たり前のように使用しているオノマトペですが、オノマトペ一つ一つに様々な種類があるということを知り、とてもおどろきました。「日本はオノマトペ大国たいこくである」とよく耳にしますが、最近さいきん出てきた悲しい気分を表すオノマトペ「ぴえん」など、新たに作られるオノマトペたちを見るとその無限性むげんせいにロマンを感じますね。


参考文献さんこうぶんけん

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