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本日の紹介者
こんにちは!
ブックリレー7回目は、英語のナビゲーターM近が担当いたします。
よろしくお願いいたします……!
第6回えすとれ先輩の「算法少女」ブックレビュー、みなさまお読みになりましたか?
えすとれ先輩の解法をなぞることができる、M近大興奮のレビューでした。
今回、私は倉橋燿子さん著「青い天使」という本を紹介いたします。
この本、実は現在 絶版になっていて、これから本を手に入れて読もうとすると、古本屋さんでの運命の出会いを祈るか図書館へ行く必要があり、今回のブックリレーへのセレクトととして適当でないかなあ……と悩んだのですが……
えすとれ先輩ご紹介の「算法少女」が、絶版ののちに2006年に復刊を果たしたと聞き、今絶版していたとしてもやっぱり私のお気に入りの本を紹介したい!とおすすめすることにしました。
青い天使
著者:倉橋燿子
出版社:講談社
出版年:1997年
ISBNコード:978-4-06-148453-5
概要
「青い天使」は主人公チナが、さまざまなできごとを経験しながら、せいいっぱい生きていく姿を書き出した小説です。
青い鳥文庫から全9巻が出ています。
チナのフルネームは萩尾千波。
フランス人の父と日本人の母(ファッションデザイナー)を持つ、ブルーの瞳の少女です。
チナは母親とふたりで暮らしており、父親のことは何も知りません。
「愛されるよりは、愛することを」「わたしたちは、あたえるから、受け、ゆるすから、ゆるされる」
舞台を東京、離島、フランスとうつしながら、チナの10 歳から20 歳までの人生がていねいに描かれます。
本との出会い
小学生のときに青い天使と同じ著者の「パセリ伝説」という本を愛読していて、別の作品も読んでみようかな……と思って手に取りました。
この本が拡げた世界
この本は本当にいろいろな考えを持った、いろいろな登場人物と出会うことができ、読むたびに私の世界をひろげてくれました。
大学に入学して人間関係論という講義を受けたのですが、そこで「アサーション」を学んだときこの本のことを思い出しました。
アサーションとは、自分の気持ち、考え、欲求などを率直に、正直に、その場の状況にあった適切な方法で述べるという、自分も相手も大切にする自己表現のことをいいます。
チナにはフランスで出会った「ビリッチ」という親友がいます。
さまざまな問題から「クローディーヌ」という人とうまく関係を築けずに遠慮を繰り返し、クローディーヌばかりを大切にし非主張的な自己表現をしていたチナに対して、ビリッチはクローディーヌとはじめて会ったとき彼女に「うれしい」と伝えます。
「会えてうれしかったから、うれしいっていっただけだよ。ほんとにうれしかったんだ。」と言うビリッチに、チナは「自分に会えたことをそんなに喜んでくれる人がいるなんて、クローディーヌだって、きっとうれしかっただろうと思った。難しく考えることは、なかったのかもしれない。会えてうれしいって、そのまま伝えればよかったのかも、とも思い返す。こっちがむずかしく考えたぶんだけ、距離が開いちゃうのかもしれないな。」と自分を振りかえります。
講義を受けてから読みかえすと、「自分以外のことを祈れるなんて、すごくしあわせだよねえ」と話すビリッチは、まさにアサーションの使い手でした。
教科との関連
ビリッチが「戦争があってから行けていないけれど……湖の色がチナの瞳と同じなんだ」と言いながら教えてくれた、彼のふるさとクロアチアにある「プリトヴィッツェ湖群国立公園」にずっと行ってみたいと思っています。
プリトヴィッツェ湖群国立公園は、192平方キロメートルの森に階段状に点在する16の湖を92の滝が結ぶ世界遺産です。
1990年代のクロアチア紛争の戦地となり、一時は危機遺産として登録された歴史も抱えています。
日光の角度、そしてミネラルや有機物の含有濃度によって美しい緑や青に絶え間なく変化する湖の色が魅力的なカルスト地形に、多様な動植物が生息、生育する……
はじめて青い天使を読んでからずっと私の憧れの場所で、プリトヴィッツェ湖群国立公園の写真集を見たり、訪れた方の紀行文を読んだり、カルスト地形や動植物について学んだりしました。