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記事の概要
先日、「唯一コロナのない」南極へ…というタイトルの新聞記事を見かけました。
南極といえば、ペンギン…。
暑くなってきたこんな時期だから、氷の島のイメージがある南極のことに思いを馳せてみました。
昔、子ペンギンの物語『ながいながいペンギンのはなし』を読んで以来、ペンギンに親しみがあります。
調べてみよう
南極大陸ってどこにあるの?
Google Mapで見てみると、南極大陸は地図の南側に位置しています。
な、なんて広大な…!!!と驚いてしまいますが、実際のところ、南極って本当にこんなに大きいのでしょうか。
「南極を切り撮る」というホームページのなかで、南極のことを次のように説明しています。
【南極大陸】
南極点(南緯90度地点)と南極点を中心とする南極大陸および周辺にある小島や棚氷、海域を含む地域を指す。
地球上で5番目に大きく、広さは約1400万平方キロメートル。
およそ100万年以上前から降り積もった雪が溶けずに大陸の約98%は平均1.6キロメートルもの分厚い氷床・氷河に覆われている。
極寒の気象条件や領有権主張が認められていないため永住者はいないが、世界30か国以上が南極に観測基地を設置しており、夏季に4000人、冬季でも1000人の調査員が現地で研究活動をしている。
いくつか難しい表現がありましたね…。
環境省の「なんきょくキッズ」の『南極辞典』を使って説明してみます。
【棚氷】陸の上にあった氷床は、海に向かってゆっくりと滑り落ちてやがて海の上に押し出されます。そのときに割れないままで海に浮かんだ部分のことを棚氷といいます。
【氷床】南極大陸はとても厚氷に覆われています。広い土地を覆う厚い氷のことを氷床といいます。南極の氷床は、大陸に降り積もった雪が長い年月をかけて厚い氷になったもののことをいいます。
地図の図法いろいろ
それにしても、南極大陸は地球上で5番目に大きい…ということであれば、冒頭の地図はなんだかおかしいですよね。
Googleマップの南極の描かれ方が不自然だった理由は、地図の描き方―図法の違いが関連しているようです。
ここで思い出してほしいのは、地球がどんな形をしていたか、ということ。
そういえば、地球は球体なのです。
いわばボール型。
ボール型の地球を平面で示すにはどうしたらよいのでしょうか?
私たちはサイコロを分解して「展開図」を作ることはできます。
でも、球体である地球を展開することはなかなか難しい。
世界地図には、球体である地球をどうやって二次元にして示すか、という課題があったのです。
そんな経緯があって、世界地図は工夫をしながら描かれています。どんな工夫をしたのか、見ていきましょう。
▼どうしても地球を展開してみたい、というあなたへ
メルカトル(Mercator)図法
私たちがよくみる地図は、メルカトル図法といわれるものです。
Google Mapが表示しているのも、この図法によるものです。
この地図、実は大航海時代に特に発展して活用された地図なんだそうですよ。
※ 緯度や経度は、なんと紀元前には概念として生み出されていたそうです。
皆さんは緯度や経度についてご存じですか?
メルカトル図法は、経線はそれぞれ等間隔・平行に表現され、緯線も平行に表現されるものの赤道からは離れるにしたがって実際の距離とは異なり間隔が大きく表現されています。
【経度】イギリスのグリニッジ天文台跡を通る子午線を基準に、東西へそれぞれ180度まで表します。東回りを東経、西回りを西経、180度と180度、東経と西経で360度です。
子午線とは、赤道に直行する地球上の南北の線のことを示し、経線ともいわれます。
【緯度】赤道を基準として南北へそれぞれ90度まで表します。赤道の北側を北緯、南側を南緯と呼びます。赤道に平行な地図上の東西の線のことを緯線と呼びます。
【赤道】地球の中心を通り、地球の自転軸に垂直な平面が地表を切る線のこと。緯度0度の点をむすんだ、地球の表面を帯のようにとりまく線で全周はおよそ4万キロ。この赤道を境として、地球は南半球と北半球に分けられます。
地球が実際に「経線」や「緯線」や「赤道」という線で刻まれているわけではありません。
あくまで自分の居場所を把握し、目的地の場所も把握し、その移動を遂行するために、こうした経度や緯度という概念が生まれたのです。
それこそ今は、「スマホ」でヒョヒョイのヒョイで居場所がわかるけど、昔の人はどうやって居場所を確認していたのか。そもそも大航海時代とかいうけれど、どうやって何の目印もない大海原で方向を掴めたのだろうか。
かつて、スマホもGoogle Mapもない時代、人々は、自然界にあるものを目印にして緯度や経度を把握していました。
実はその計算方法も、改良に改良を重ね、苦労の末、確立したのだといいます。
緯度はどうやって測るのか――
緯度は、海面に対する太陽や北極星の角度から計算したそうです。
北極星は、地球の自転軸の延長にある「天の北極」付近に位置している星です。自転軸の延長に位置しているために、時間が変わっても北極星の位置はほとんど変わることがありません。
ところで緯度は、「赤道を基準として南北へそれぞれ90度まで表したもの」でしたよね。その赤道は、「地球の自転軸に垂直な平面が地表を切る線のこと」です。
なので、地表や海面から北極星を見上げるときの角度が、その観測地の緯度を示すことになるのです。
北極星は「天の北極」付近に位置しているので、南半球からは見ることができません。代わりに南十字星(サザンクロス)という星座が南半球では見られたりします。
北極星はこぐま座の一部ですね。北極星を見つけるのに目印によくされるのが北斗七星です。
▼北極星の見つけ方を知りたいあなたはこちら
経度はどうやって測るのか――
一方経度を測定するのは、困難を極めたそうです。原因は、北極星のような目印になるものがなかったためです。
ですが、時計が開発されたことを受けてようやく経度は測定可能になりました!
経度は、グリニッジ天文台跡を通る子午線を0度にして東回りに180度、右回りに180度の目盛りを付けたようなものとして理解することができます。
そして地球は自転していて、24時間で一回転する――この法則を利用して、経度を測ろうとしたわけです。
360度÷24=15度
で、一時間に地球は15度回転を進めていることになります。この理解をもとに、出発地点と到達地点で太陽が最も高い位置に来た時の時刻を比較すると、2地点の経度差を把握できる、ということになったわけです。
ちなみに、東京駅があるのは、「東経139度46′ 2”」だそうです。
この情報をもとに、ロンドンとの時差を調べてみましょう。
さて、何時間の時差があるのでしょうか??
139÷15=9.2666……
一時間分の経度差は15度でした。
ロンドンのグリニッジ天文台の経度が0度。東京駅の経度が約139度。
ロンドンと東京の2地点の経度差(=139度)を15度で割れば、時差が求められますね。
つまり、この計算で、ロンドンと東京の間には約9時間の時差がある、ということが分かってしまうわけなのです。
▼自宅の緯度と経度を調べてみたい!!というあなたはこちら
モルワイデ(Mollweide)図法
万能に思えたメルカトル図法。ですが、緯度と経度をまっすぐに引いたが故に犠牲になったものがありました。
それは「面積」です。
経線も緯線も球体に引かれている(ことを想定した)線です。つまり経線や緯線は直線ではなく曲線なのです。
北極や南極に近づけば近づくほど経線同士の幅は狭くなるはずですが、メルカトル図法では平行を保って引かれているため、北極や南極に近い地域は不格好に拡張されてしまうのです。
それで、冒頭のGoogle Mapで見たとおり南極大陸がとてつもなく巨大に見えていたのですね。
モルワイデ図法は、その問題を解消しようとして生まれた地図です。
モルワイデ図法は地図上のそれぞれの場所で実際の地球表面の面積との比が等しくなるように作られた「正積図法」の地図なのです。
モルワイデ図法の手法がとられるのは地球全体を示した地図―世界地図が圧倒的で、一般的な地域の地図で用いられることはあまりないようです。面積が重要な要素になるような情報を示す際に、誤解を招くことがないよう、モルワイデ図法が用いられることが多いようです。
正距方位図法
さて、さまざまな地図の図法をみてきましたが、実はメルカトル図法にもモルワイデ図法にも克服できていない点があります。それは、「距離」です。
この図法は、地図上の原点から各地点に引いた直線の長さを地球上の距離と正しく対比させたもの。原点から目的地までの方位角も正しく反映されますが、原点以外の点と点の距離と方位は正しく表現されません。
出発地点で進むべき方角と距離を把握するにはよいかもしれませんが、移動を始めたら常に地図を見る「原点」は変化してしまいますよね。
この地図は、あくまで二点地間の最短距離を求めるために生まれたのだそうです。
メルカトル図法が航海の過程で生まれた図法であったとしたら、正距方位図法は飛行機で移動する際に使う航空図として活用されているといえるでしょう。
▼いろいろな地点を原点にした正距方位図法の地図を見てみたい!というあなたはこちら
ちなみに、Google Mapでも、下の画像のとおり、「地球儀」のようなマークを押すと球体で位置関係や大きさを確認することができますよ。
ぜひ確認してみてください。
参考
- 十勝毎日新聞電子版 「南極を切り撮る Take the Antarctica」
- 環境省 「なんきょくキッズ」
- 地球儀いろいろ
- 星座図鑑 「北極星の探し方、見つけ方」
- Leaflet 地理院タイル 「ウェブ地図で緯度・経度を求める」
- 英国ニュースダイジェスト 「夏時間スタート前に浮かんだ素朴な疑問 グリニッジはなぜ経度ゼロなのか?」
- 国土交通省 国土地理院 「経度、緯度って何だろう?」
- 空間情報クラブ 「メルカトル図法|特徴とWebメルカトルについて解説」
- 株式会社 中央ジオマチックス 「地図の歴史」
- WINGFIELD since 1981 「『真東の方向』と『真東に進む』の違い」
- 株式会社オンターゲット 「どこでも方位図法」