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まなキキ・ブレンド、開発の背景
「学びの危機」
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって大きく揺らいだ、私たちの「学び」
特別支援学校には、手取り足取り、丁寧かつ緊密な「学び」を重視してきた歴史があります。
しかし、2020年4月からの新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、特別支援学校での「学び」も例外なく、変化を余儀なくさせるものとなりました。
特別支援学校が直面した、「学び」の変化については、Learning Crisis研究会 学びの危機プロジェクト(まなキキ・プロジェクト)が2020年に実施した調査にも現れています。
よろしければ、下記ページをご覧ください。
さらに、「学び」の変化に、私たち大学生も直面することとなりました。
大学は4月から休校になり、Zoomでのオンライン授業が始まる日々……。
画面越しで、先生方・学友と議論する状況が当たり前になったのです。
オンライン教育で求められる「新しい学び」
半ば、強制的なオンライン化によって、ZoomやGoogle Classroomなど、オンライン教育を支えるツールの利活用が進みました。2020年4月の段階では、スクリーンリーダーとの相性が悪かったり、字幕をつけることができなかったツールも、これまで以上に早いペースで、アクセシビリティ面の改善がみられ、障害のある子どもたちが「学び」のスタートラインに立つ環境整備も進みました。
しかし、ツールが進歩しているにも関わらず、オンライン教育における課題として、空間を共有できないことによる「モチベーション低下」の問題が指摘され続けています。
例えば、岡田(2021)は、長崎大学に通う大学生にオンライン授業のメリット・デメリットを問う調査を行い、デメリット1位の「授業に集中しにくいこと」の理由を以下のように指摘しています。
自宅で授業を受講する場合は、授業を受ける時間とプライベートの区切りを明確に分けることが困難になる。自室だと周囲には授業への集中を逸らす物が多数存在する。更に、オンライン授業で動画や授業資料を見て課題をするという授業プロセスがプライベート空間の中で繰り返し行われる中で、学習活動はどうしても単調化されてしまう。(岡田, 2021: 30)
この指摘は、オンライン教育で求められる「新しい学び」には、「学び」の空間をどのように作っていけるかを考えることがいかに重要かを示しているといえるでしょう。
教室であれば、同じ空間を共有していることが、「学び」を支えるモチベーションになりますが、オンライン授業だとそうもいかない……。
画面越しに、教師・学生が一体感をもって「学べ」ないという課題に対し、同じ空間を共有するという体験をもって答えられないだろうか…??
そこで、注目したのが、同じ空間を共有する体験を演出する、「香り」という要素でした。
同じ香りを共有することで、一緒に「学ぶ」空間を作ることができないだろうか?と考えたのです。
そして、「学び」の空間を作るうえで、最適なものを検討し、コーヒーに白羽の矢が立ったのです。
なぜ、コーヒーが最適だったのか。
概要版にはなりますが、以下に大まかな理由を記載しますね!
文化としてのコーヒー
社会的活動の一部としての意味をもつ、コーヒー
コーヒーは、たんなる気分転換のためだけの飲み物ではなく、社会的な意味を持つ飲み物(Giddens, 2009=2019)と指摘され、社会学の分野でたくさんの議論がなされています。
それらの議論の中でも、とりわけ、注目に値するのは、コーヒーと「学びの場(学問の場)」との結びつきの強さを示すものです。
コーヒーと「学びの場」の繋がり
Standage(2006=2017)は、コーヒーが「学びの場(学問の場)」の形成に貢献してきた歴史を下記のように整理しています。
イエメン→アラビア→ヨーロッパへ渡ったコーヒー
コーヒーはもともとは、宗教的な飲み物としてイエメンで誕生。
アラビア世界→ヨーロッパへと浸透、思考を明確にする香り・味として注目され、大流行する。
大流行した時期こそが、科学革命とちょうど重なっているのだそうです!
科学者たちによる愛好
コーヒーは、飲むと思考が明瞭になる飲み物であることから、議論好きの自然哲学者(当時は、科学者と言われていました)たちが好まれるようになります。レーウェンフックやハレーなど、今に伝わる著名な科学者たちも、コーヒーを片手に議論し、公式を思いついたと言われています。
コーヒーは、科学革命の時代に、学術討議の場の空間を支える飲み物として、定着し始めたといえるでしょう。
コーヒーハウスの流行と、「学びの空間」・「繋がり」の形成
コーヒーを飲みながら、自由闊達な議論を行う空間が定着した結果、イギリスではコーヒーハウス(通称、「ペニー大学」)と言われる「学びの場」が成立するまでに致しました。これは、コーヒー1杯(1ペニー)の料金を支払えば、身分に関わらず、だれでも学者として議論に参加できる場所でした。大学教授のみならず、芸術家や僧侶、一般市民がコーヒー片手に、情報交換や学術談義に花を咲かせたそうです。
イギリスでの大流行を受け、ヨーロッパ各地に、コーヒーハウスが次々と作られ、カフェ文化が根付いていきます。これらのコーヒーハウスでの議論や、「学び」から生まれた「繋がり」は、やがて社会を変えるきっかけすら作っていくことになります。コーヒーハウスでカミーユ・デムーランが行った演説が、フランス革命の引き金になったのです。
これらの歴史をまとめると、
コーヒーは、香り・味を強力に印象づけるものであり
1杯のコーヒーとともに自由闊達な議論を楽しむ文化(「学びの空間」を創出する文化)がある!!
と、いえるでしょう。