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本日の紹介者
H松さんのブックレビュー、面白かったですねぇ。
星新一、ブラックなキレッキレのお話が多い印象でしたが、星さんのファミリーヒストリーみたいなものも紹介してくださっていたおかげで、なんとなく想いやバックグラウンドのようなものを知ることができたような気がします。必見ですね!
私も感化されて、文庫の『おせっかいな神々』を読み始めました。…おもしろいです。私にとっては、星新一の書く物語は、シュールっていうか、スマートというか、読み終えた後に、なんだか口笛吹きたくなる感じです。
そして今日、私がご紹介させていただくのは、小学生のとき、ハマったシリーズもの…探偵ものの大御所…『シャーロックホームズの冒険』です。
シャーロック=ホームズ全集
著者:コナン・ドイル
翻訳者:各務三郎
出版社:偕成社
出版年:1985
ISBNコード:978-4037380304
概要
イギリスの名探偵、シャーロック・ホームズが難事件と向き合ってさまざまな推理を展開していく探偵小説。
黒幕のモリアーティ教授との対決など一連のシリーズを通してホームズが活躍していくので、当時小学生だった私は一冊一冊読み進めていくのがとても楽しみで、最終巻はさみしくて泣いた思い出があります。
※ サピエおよびデイジーにはシャーロックホームズシリーズは数多く収録されていました。ただ、同じホームズ作品でも翻訳者が違ったり、若い世代向けのものだったり、いくつか種類があるようです。
ぜひ読み比べてみたりしても面白いかもしれません。
※ 青空朗読に収録はありませんでしたが、青空文庫に収録された作品を朗読したものをyoutubeでいくつか見かけました。
小学生当時のM先生が、どの訳者のシャーロックホームズを読んだのか、実は忘れてしまいました…。
何となく、これかなあ…と思うものを今回は挙げさせていただいています!
同じ訳者の作品がサピエに収録されていて、そのタイトルが『バスカビル家の犬』だったので、実はISBNは『バスカビル家の犬』になっています。
『緋色の研究』がシャーロックホームズの冒険のシリーズ第一作目なので、この本から順番によんでみるのもオススメです!
本の情報
確かこの出版社のこの訳者の方の本だったのではないかなあ…と記憶しています。
かっこいい装丁と挿絵が入っていたことは覚えています。
対象年齢は小学校高学年から。
本との出会い
小学生のとき、小学校の中にある図書館に通うのが好きでした。
ある日、ふと手に取ったのがシャーロック・ホームズのシリーズ。
なんとなーく読んでみましたが、あっという間にハマりました。
小学校4,5年生の頃だったと思いますが、すっかり影響を受けた私は、暗号で書いた手紙を友達と送り合って遊んでみたり、尾行ごっこしたものでした‥‥。
ホームズがカッコよくてとても憧れていたのですね。
何とも博学で、いざという時に臆せず勇敢で、変貌自在に変装とかしてしまったり、かつ変人でお茶目なところがステキでした。
ホームズの友達で相棒役のワトソン君のツッコミ?がホームズの魅力を引き立てていました。
シャーロック・ホームズが面白かったので、隣にあったアガサ・クリスティ作の名探偵ポアロシリーズに手を出そうとしたのですが、なんとなく合わなくて、すぐに断念しています。
もしかしたら、訳者や出版社が違ったらアガサクリスティにハマっていた可能性もあったかもしれません…?
(名探偵ポワロの風貌の描写が、子どもごころに、魅力的には思えなかったような記憶もあります…)
この本が拡げた世界
ハマった理由の一つは、シャーロック・ホームズの抜群の推理力が強烈にかっこよかった、ということだと思います。
捜査依頼に訪れた人の些細な特徴から、その人がどんな人間か言い当ててしまったりするのです。
以下は、シャーロック・ホームズの冒険シリーズの第一作目。『緋色の研究(緋のエチュード)』からの引用です。
著者:ドイル アーサー・コナン
翻訳者:大久保ゆう
青空文庫(アクセス日:2020年7月17日)
シャーロック・ホームズがワトソン君と初めて出会うシーン。
「ワトソン博士だ、シャーロック・ホームズくん。」とスタンフォードは私を紹介してくれた。
「初めまして。」と誠意のこもった声で、男は私の手を信じがたいほど固く握りしめた。「アフガニスタン帰り、ですね。」
「どうしてそのことをご存じで?」と私は驚きのあまり聞き返した。
―――中略―――
「それにしても。」と私は立ち止まり、スタンフォードの方を向いて、ふと訊ねる。「何がどういうわけで、あの男は私がアフガニスタン帰りと知っていたんだろう。」
すると連れは不可解な笑みを浮かべる。「そいつがあの男の変わった癖なのさ。みんな、その手口を知りたがる。」
「ほお! 謎というわけか!」と私は両手をこすり合わせた。「味なことを。引き合わせてくれて、君には本当に感謝している。『人間の真に研究すべくは人なり』とな。」
スタンフォードはさよならついでに、「まず、あの男を研究してみることだ。あいつこそが難問だとわかるよ。それに絶対、こっちよりも向こうに自分のことを知られてしまうからさ。じゃあ元気で。」
「ああそっちこそ。」と返し、ホテルまでの道をそぞろ歩きながら、私は我が新しき知己に並々ならぬ興味を覚えていたのであった。
※ この後、なぜワトソン君が「アフガニスタン帰り」だと分かったのか種明かしをしています。
観察を通じてその人の生活背景や職業など推理できてしまう……という驚きは、当時の私を感嘆させ、”ホームズごっこ”をさせるに至りました。
もちろん、ホームズになれるわけではないので(パイプをくわえてみるとか、そういうコスプレにも至りませんでした。ただ、懐中時計には憧れました)、憧れて、いろいろホームズが知っていそうなことを知りたがったり、「推理」もどきでいろいろなものを観察してみたりしていました。
そしてやっぱり、シャーロック・ホームズを読んだからといって「論理力」や「推理力」が身につくわけではないのです。ただ、知識を持つことの意味や価値は痛感させられたような気がします。「もっといろいろなことを知りたい!」と思うきっかけにはなったことも間違いありませんでした。
人や社会、ある出来事を理解するときに、「知識」が、ものの見かたを広げたり、深めてくれることがあります。
「知識」が具体的な生活の一場面と結びついてくることで、『そういうことだったのか。なるほど。』という気持にさせられたり、『もしかしたら、こういうことなのかも?!』と発想がひらめいたりします。
ホームズがふっとした瞬間に、さまざまな知識と結び付けて、何かを考えたり、ひらめいたりできる姿は本当にステキ!としびれたものでした。
知ったり、学ぶことは楽しい!と思えるようになったのは、もしかしたらホームズのおかげだったのかもしれないです。
教科との関連
ホームズが生きた世界
ホームズが生きた世界は第一次世界大戦の頃で、移動手段は馬車だったりします。
シャーロック・ホームズ・シリーズで「自動車」が登場するのは、最後の作品の『最後の挨拶』のみだそうです。
ワトソン君はお医者さんで、しかも軍医。(先ほど引用した『緋色の研究』を読んでいただくと、ワトソン君がどの戦争に派遣された軍医であったのかが分かります…!)たびたびモルヒネやコカインなどの薬の名前が登場したりします。
世界史の勉強をした方は思い起こす方もいるかもしれませんが、イギリスは中国(当時の清)とアヘン戦争という名前の戦争をしています。
物語を楽しむ上で、背景知識は一切必要ありません(小学生が楽しめる物語です)が、後から「そういえば、そんなこと話題に挙がっていたなあ」と楽しむこともできるでしょう。
私自身も、間接的にヴィクトリア朝期のイギリスの雰囲気や空気感をなんとなく知ることができていたのかもしれません。
(国語と全く関係がなくてごめんなさい…)
ホームズの世界の小道具
暗号
冒頭に尾行ごっこや暗号づくりにハマった?と書きましたが、
通っていた学習塾の国語の教科書の表紙にあった象形文字?のようなものを暗号として友達と文通をすることに至りました。
「ブックレビューを書こう!
よーし!『シャーロック・ホームズ』を紹介するぞ!となったわけですが…。
そういえば暗号で遊んだなぁ…と思い出して、「あれは何だったのだろう?」と調べてみたら、私が暗号として遊んでいた文字は、古代文字とよばれるものの一種だったようです。
残念ながら、当時はそれが何かも分からないまま、法則性を見つけて「暗号として使える!」と遊びに使ってしまっていたのですが…。
M先生が出会った「古代文字」は、日本語の母音「あ・い・う・え・お」を示すそれぞれの記号と「ア行・カ行・サ行・タ行・ナ行・ハ行・マ行・ヤ行・ワ行」を示すそれぞれの記号を掛け合わせて示す、というタイプのものでした。
改めて考えてみると、点字も同じようなメカニズムで五十音を形成しています。点字の場合は6つの点の組み合わせで見分けるわけですが、点字を勉強し始めたときにも、やはり当時の暗号遊びのことが懐かしくも思われたりしました。
(実際に、現在の6点で構成する点字を発明したといわれるルイ・ブライユは、暗号として使われることのあったシャルル・バルビエの12点点字から着想を得たのだそうです)
シャーロック・ホームズシリーズの作品で暗号が出てくる代表的な作品は、『シャーロックホームズの思い出』に出てくる「グロリアスコット号事件」や『踊る人形』です。
バイオリン
私が小学生当時、ちょうどシャーロック・ホームズのドラマがNHKで放送されていたので、毎回楽しみに鑑賞していました。
ホームズ役をしていた俳優さんはイメージにとても合っていて、素敵でした。
私は、このドラマのオープニングのバイオリンの演奏が素敵でとても好きでした。
そして、実は、シャーロック・ホームズも自他ともに認める、バイオリン奏者であったとされています。
シャーロック・ホームズが持っていたのは、ストラディヴァリウスのバイオリン。バイオリン界では知らぬものがいないほどの名器!を弾いていたといいます。
本当にM先生の単なる趣味の話になってしまって大変恐縮なのですが…、ヤッシャ・ハイフェッツというバイオリニストがいます。
ロシア帝国下、リトアニア生まれのバイオリニストで、超絶技巧の演奏をすることで知られているのですが、どうしても、シャーロック・ホームズとハイフェッツを重ね合わせてしまいます(見た目とバイオリンだけかもしれませんが…)。
そして、ハイフェッツもストラディバリウスを所有していたことで知られています。
ハイフェッツについてもいろいろ考えさせられるのですが、その話はまたいずれ…
推理小説いろいろ
「推理小説」というジャンルを確立したといわれているのは、エドガー・アラン・ポー(登場する探偵はC.オーギュスト・デュパン)といわれ、コナン・ドイルにも大きな影響を与えたといわれています。
ちなみに、日本の推理小説家、江戸川乱歩は、エドガー・アラン・ポーをもじってペンネームにした、という逸話も有名ですね。
そもそも、推理小説は犯罪事件を対象に事件を解明したり、犯人を暴いていくことをテーマにした物語です。
そのような意味では、警察組織が確立したり、司法制度が整ってきた、という社会環境も推理小説誕生に大きく関わっているといえそうです。
みんな大好きなコナン君が、ふっと脳裏によぎるような名前も多かったのではないでしょうか。
ぜひ、元ネタの一つ、シャーロック・ホームズも楽しんでみてもらえるとよいかもしれません。
個人的には、シャーロック・ホームズとワトソン君がコンビを組んで問題に挑んでいくスタイルは、(推理)小説の王道スタイルにもなったのではないかなと思います。
探偵役と助手役(読者と近い目線に立った人物)がいることで、私たちも事件に安心して首を突っ込んで楽しむことができるのかな、と思うと、コナン・ドイルの作家としてのひねりや工夫も想像できるような気がします。
さいごに
シャーロック・ホームズは本当に大人気です。(聖書の次に売れたベストセラーともいわれるそうです)
現在もイギリス・ロンドンのベイカー街には、ホームズとワトソン君の家があり、記念館になっています。
皆さんもぜひ、シャーロック・ホームズの世界を楽しんで見てくださいね。
先ほど挙げたyoutubeでも、シャーロック・ホームズのドラマ(本ではないですけど…)を楽しむことができます(英語音声・日本語字幕)ので、オススメです。
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