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こんにちは。H松です。今回は、2020年10月25日開催の、「まなキキonline職場見学&シンポ」の模様をお伝えします!
まなキキonline職場見学
開催日時
2020年10月25日13:00~14:50
online職場見学の模様
各団体、20分程度の職場見学&10分ほどの質疑応答を行いました。
職場見学は、(1)事前収録の動画を流している間に、Zoomの音声を重ねる形で解説を頂く(2)司会のH松がカメラを持って、リアルタイムでおだまき工房さんを訪問し、工房の様子を中継するという2パターンの形式で進行しました。参加者の皆様からの質問を随時受け付けて、質問に回答しながら職場見学を進める一幕もあり、オンラインという環境ながらも双方向性のあるイベントとなりました。
下記、online職場見学の模様をダイジェストでお伝えします。
一般社団法人ビーンズ ソーシャル グッド ロースターズ千代田さま
ソーシャルグッドロースターズ千代田さんの店内の様子や仕事の模様について、代表理事の坂野さまから解説を頂きながら、参加者全員で学びを深めました。
コーヒーづくりを行っている作業スペースの机は、コーヒーを注文するカウンターの横にあります。コーヒーが丁寧に作られている様子を見ながら、作り立てのコーヒーを楽しむことができるんですよ!
障がい者支援施設 おだまき工房さま
おだまき工房さんの職場見学は、施設長の岡田さま&おだまき工房のメンバーの皆さまにご出演頂きました。
おだまき工房さんは、廃校になってしまった小学校の教室の一角にあります。この小学校に通っていた人にとっては、思い出の場所なのかもしれませんね。H松も、小学生だった時代を思い出して、懐かしい気持ちで廊下を歩いていました。
さき織りに使用する布は、地域の人たちから寄付頂いた着物の生地を使っているそうです!想い出の着物の生地を使って、小物やバッグにしてほしいという依頼を頂くこともあるのだとか。おだまき工房さんが、地域との繋がりを大切にされていることが、こうした点からも見えてきますね。
特定非営利活動法人 札幌チャレンジドさま
理事長の加納さまから解説を頂きながら、動画を見る形で、札幌チャレンジドさんの事務所にお邪魔をしました。
札幌チャレンジドさんは、札幌駅から歩いてすぐの場所にあります!アクセスしやすい場所にあるというのは、とっても便利ですね。
こうした工夫は、「どうやったら仕事の質をあげることができるのだろう?」と考える視点から日々生まれるのだそうです。障害者だから可哀想…と思って「配慮」を提供するのではなく、どんな配慮なら理にかなった配慮なのだろうか?と考えることで、働きやすい環境が生まれているんですねえ。
参加者からのご感想(抜粋)
参加者の皆さまから頂いたご感想の一部を紹介します!どのご感想も、熱意がこもっていて…。イベント終了後、拝読しなから、思わず涙が…。ご感想をお寄せいただいた皆さま、本当にありがとうございました!
手持ちのカメラでの職場見学、とてもワクワクした気持ちで拝見することができました。それぞれの団体様で取り組んでいること、職場環境、雰囲気等違いはありましたが、どこもシンプルに職場として働きたいと思える良い職場だなと感じました。
オンラインでも社会科見学を、という大人の熱意に感動すると共に、子供時代に実際に五感を使って直接体験する重要性を実感した。やはり教科書を読んだり教員の話を聞いたりするだけでは「知る」で終わってしまう。「自分でやってみる」ことで「学ぶ」ことに繋がるのだと思う。
就活を始めるにあたり、インクルーシブを売りにしている企業の説明会に参加をしているのですが、どの企業も「個性を生かして働ける現場」というよりも「周りに合わせて働くためにどのような工夫をしているか」という方を重視しそれらを売りにしているように感じてしまっていたのですが、今回社会科見学でのぞかせて頂いた企業はどこも「自分の弱点をどのようにして埋めるか」ではなく「自分の出来ることや得意なこと、また本当に興味を持っていること」にフォーカスしそれらの技術を延ばしていけるような環境づくりに励んでいることが今回の職場見学を通して感じられました。
オンライン上で中継先の映像を見たり、youtubeを流しながら代表者の方と繋いでお話を聴くというイベントは初めてだったので、新鮮でしたし、かつ実際に利用者のみなさんがどのように作業しているのか雰囲気を感じ取ることができました。「ビーンズ」さんでは、健常者も障がい者もお互いに品質の価値への妥協を惜しまない姿勢にものづくりの熱意を感じました。また、支援員は助けるのではなく、あくまでも美味しいコーヒーを提供するという支援をする役割を果たすというところに、単なる施設ではなくてチームとして顧客の満足度を高めていく考えが浸透しているのだなと感じました。「おだまき」さんの中継先で、利用者さんが楽しさを見出しているような印象で、居心地が良さを感じながら作業していた姿が印象的でした。
施設内の雰囲気も温かい感じで、完成されたものを見ると作品にも作っていた時の気持ちや思いが現れているように感じました。コロナの影響で展示回数に影響が出てしまっているのは非常に残念ですが、込められた思いや作品を見に足を運んで見たいと思いました。「チャレンジド」さんでは、合理的配慮や在宅勤務を十年も前から取り入れていると知り、時代の変化を敏感に感じ取ることが一人一人のきめ細やかなサポートに繋がるのではないかと気づくことができました。
伴走者として、安心して働ける環境を用意するための土壌が整っていると感じました。御三方も共通して、一人一人の気持ちや思いを社会にどのように還元するか、実現するかを第一に考えていて、目まぐるしく変化する状況の中で、その人のもつ能力を生かせるような配慮に焦点を当て日々見極めながら活動していらっしゃった熱い思いを聴けて良かったです。一人一人の選択肢や可能性を広げるための社会づくりに興味が湧きました。
はじめて障害者支援の職場見学をすることができ、とても良い経験になりました。まず、ソーシャル グッド ロースターズさんを見学して、一人一人の個性がコーヒーの味に出ていて、それらを合わせて美味しくて最高のコーヒーを作るというのが、素敵だと思いました。一人ひとりの個性を大切にしているのだなと思いました。次に、おだまき工房さんを見学して、細かい作業が多いのだと感じました。また、利用者の方は楽しんではた織をしているのだなと感じました。最後に、札幌チャレンジドさんを見学して、視覚障害を持つ人の導線を取るためにタイルやカーペットなどを工夫したり、車椅子の人もいるので仕事のスペースを広くしたりなど、様々な工夫がされていて、利用者の方が快適に安心して仕事に集中することができるようになっているのだと感じました。また、マンツーマン指導では、自分が学びたいことを学ぶことができるというのが良いと思いました。
一人一人の個性を大切にしながら、やりたい仕事をできる場所があるというのは、素晴らしいことだと感じました。また、利用者の方達がやりがいを感じ、安心して仕事をすることができる空間、制度を作ることが大切なのだと感じました。
【ソーシャルグッドロースターズさん】私たち学生の間でもスタバで働くことは憧れであるので、コーヒーが好きな方もいらっしゃるとは思いますが、そのような憧れもコーヒーのバリスタになりたいという気持ちにあるのではないかなと思いました。坂野さんのおっしゃっていたことの中で印象的だったのは、「助けてあげるだけでなく、助けてもらう場面も多い」という言葉でした。普段障害のある方と触れ合う機会のない私は、助けてあげないといけないのではないかと勝手に思ってしまっていました。コーヒーぜひ飲みに行きたいです!
【おだまきさん】自分でデザイン案を考えていらっしゃることにとても驚きました。決められた物を作っているわけでなく、自分で色を組み合わせたり、細かい作業もされてて、すごいなと思いました。流れ作業で何も考えずやる作業でつまらないという仕事ではなく、皆さん色々考えながら楽しそうに作業をしているなと感じました
【札幌チャレンジドさん】パソコン講習会と聞くと、決められたことをできるようにするという印象が強かったので、本人の希望に沿って3Dプリンターを用いたり、エクセル・ワードをしたりするということでとても良いなと思いました。またチャレンジドさんの通院休暇という制度の素晴らしさと加納さんの「障害者でかわいそうだから有給休暇をあげているのではない」ということが印象に残りました。
シンポジウム「はたらくって、なんだろう?」
ここからは、シンポジウムの模様をお伝えします!
開催日時
2020年10月25日(日)15:00~17:00
シンポジスト
一般社団法人ビーンズ ソーシャル グッド ロースターズ千代田 坂野拓海さま
障がい者支援施設 おだまき工房 岡田眞人さま
特定非営利活動法人 札幌チャレンジド 加納尚明さま
津田塾大学インクルーシブ教育支援室ディレクタ 柴田邦臣先生
司会:H松
ご講演内容
シンポジウムは、最初に15分ほどそれぞれの団体の活動についてご紹介を頂きました。リアルタイムで参加者から寄せられる質問に回答しながら、より詳細なご説明を頂くこともあり、オンラインイベントだからこその一体感や臨場感が生まれたシンポジウムでした。
札幌チャレンジドさんの活動について
札幌チャレンジドは、「ITでマザル、ハタラク、拓き合う」社会を作りたいということで活動している団体です。行っていることは、「ITで」ということなので、ITを活用した、障害のある方の社会参加と働く支援です。いくつかの福祉サービスも活用しながらやっています。
札幌チャレンジドの事業は、大きく分けて4つあります。
1つめは、札幌チャレンジドで働く就労継続支援サービス。2つめは、就労移行支援サービスです。札幌チャレンジドではなく、他の企業で働く人を応援する取り組みを行っています。3つめは、パソコン講習会などの委託事業。これは、もともと札幌チャレンジドがパソコンを教える活動をしていたこともあって、昔からの活動を今も継続して行っているというものでもあります。そして、4つめは障害のある中高生を対象としてパソコンの勉強をお手伝いするという、放課後デイサービス事業です。
団体が出来たのは2000年です。世の中にWindows2000というOSが出てきて、インターネット元年が大体2000年くらいといわれています。そんなころに、このインターネットやパソコンを障害のある人「こそが」活用していけるんじゃないか、ということで団体を作り、そこからもう20年経っています。
現在は「キャリアデザインセンター」ということで、中高生から大人まで、自立を目指す障害のある人がどうキャリアデザインしていくのかっていうようなことを考えていくことを我々の一つの柱としてやっています。
札幌チャレンジドでは、毎日大体20人くらいの人が、大体10時から17時くらいの中で、自分の時間帯で働いています。とにかく「自分らしく働く」ということを大切にしています。自分らしくということなので、在宅という選択、テレワークという選択肢もあります。
やっている主な業務は動画サイトのコメント監視や国際線の航空券の予約サイトのデータ入力などです。企業が一般企業に出す仕事をお引き受けして、札幌チャレンジドが組織としてクオリティと納期を保証しながら、データ納品を行う形ですので、企業が一般企業に発注する価格を意識しながら、ちゃんと対価をもらってやっています。「札幌チャレンジドに出すから料金は半分でいい」というようなことはないようにしています。
障害種別を問わないというのも、札幌チャレンジドの非常に大きな特徴の1つです。どんな障害があっても「パソコンを使って働きたいんだ」という方を応援するということで、種別を問わず受け入れています。
最近は精神・発達の方でかつ手帳がない方、手帳がなくても自立医療を受けていればこういう福祉施設で働くことが出来るので、そういう方も増えてきています。一度企業で就職した経験があるんだけどいろいろ難しさを感じて札幌チャレンジドで今は働いているっていう方もいますし、札幌チャレンジドで長く働きたいという人が非常に多いのが特徴です。
20年経って今では事業規模が年間で1億3千800万円になりました。決して、こういうものが突然生まれたわけではありません。最初の2000年は職員0名、事務所もなかったわけです。3年目でやっと事務所の職員が1人、月10万円で働いてもらえるようになって、2015年に事業規模が1億円を超えて…というように、20年かけてちょっとずつちょっとずつ事業規模を増やしていきました。社会課題解決としてできることも、事業規模の拡大に伴って、だんだん広がってきました。
NPOらしいって言えばらしいと思うのですが、こういう形でソーシャルビジネスを少しずつ少しずつ広げてきたのが、札幌チャレンジドという団体です。
参加者の皆様からは「家賃が年間1千万ほどということですが、どのように賄っているんですか?」という素朴な質問を寄せて頂きました。
1億3千万の収入があるから1千万の家賃が払えるんですよね。収入の内訳ですが、まず、約3千数百万円の企業からの収入があります。その収入については、そのまま札幌チャレンジドで働く障害者の賃金にしています。残り1億円が色々な福祉サービスをやっていることによる国からの給付金であったり、札幌市からの委託事業の収入であったりとか、まあそんな大枠のポートフォリオですね。
興味のある方は札幌チャレンジドのホームページで、過去20年間の決算書をすべて公開していますので、是非ご覧ください!
その決算書を観ていただくともっと細かく「どういう収入があってどういう支出があるか」が分かります。
おだまき工房さんの活動について
おだまき工房は、小平市で唯一廃校になった小川東小学校を活用した市の施設の中で、2教室分を借りて活動をしています。
活動内容は、さき織りという織り方でバッグやポーチなどの小物を製作するというものです。手作りの自主製品をコツコツ作って売っていくというスタイルを30年近く貫いています。
私たちのキャッチフレーズとして「人とつながるものを作りたい」というコンセプトを掲げています。これは実はあるメンバーさんが「自分が織るものを通じていろんな人とつながれるといいな」という言葉をおっしゃられたのをそのまま使わせてもらっています。
実は、さき織りは地域の方から着物の生地とかをいただいて、いろんな色の布を使って織るんです。地域の方から着物を頂くところで、まず1つコミュニケーションが生まれます。例えば、おばあちゃんが使っていた着物を「これを捨てるのはもったいないからなにか織ってください」とか、中には「記念のバッグにしてください」みたいなのもいらっしゃいます。
織り手はですね、その着物の生地がイメージに合うかなというのをチョイスして織っています。これをどんなふうに仕上げてどんなふうにお客さんに届くかな、どんな作品になるかなっていうのを思って作っていくわけなんです。
そうやって作った作品は、同じく小平市にある一橋学園の商店街(学園坂商店街)の空き店舗を利用したお店で販売しています。そのお店は、おだまき工房の就労継続支援B型事業にあたります。
商店街のお店で販売したり、吉祥寺だったり国立だったりのギャラリー販売など、今度はお客様にそれを手に取っていただいて、見ていただいて中には買っていただいてということで、そこにまた会話が生まれます。
物を作ることでいろんな場面で会話が生まれていくということが、このさき織りっていう活動のいいところです。「どうしたらきれいに出来るかな、ここをもうちょっと直そうかな」とかいろんなことをやり取りして、いろんな会話が生まれます。人と人をつなぐ、紡いでいく、そこで会話が生まれるっていうことを大切にしながらやってきているんです。
物を大事にしながら地域につないでいく、そのつなぐ役を障害のある人たちが担っていくという考えをおだまき工房では、特に大事にしております。
さき織りの仕事は、手仕事です。手仕事というのは、働くことの原点のようなところがあるなと感じてもいます。1つ1つの作業はシンプルで簡単だけれど、確実にそのスキルを身につけて、手で作品を生み出していくという過程を経験することが、メンバーの皆さんの自信に繋がっているとも考えています。
ただ、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言発令時には、今までのやり方を変えなければならならず、大変だと思うこともありました。希望者を募り、半数以上の方には在宅で仕事をしてもらいました。おだまき工房の仕事は手仕事ですから、インターネットを活用してというのもなかなか難しい。物を作ってここに人が集まって、そこでワイワイやりながら作るというものが欠けてしまったというところは正直辛いですね。それでも、ご自宅でデザイン画を描いてもらったり着物の布をほぐしてもらったり、できることを模索しながら、仕事を続けてきました。中には、機織りをするための織り機をご自宅に持って行って、家で作品づくりを続けた方もいます。
今は、そのときよりも流行の状況が軽くなって、社会も元に戻ってきていますが。これはこれで、狭いところに大勢のメンバーが集まることになるという悩みが。戻ってきてリズムが整ってよかったと思う一方で、今は常にハラハラしながら活動しているというところもございまして、とても難しい環境だなと思っております。
参加者の皆様からは「作り手の方と買い手の方のやり取りなど、対面での出店等には代えがたいものもありそうですね」というコメントを頂きました。
はい。それは実際にその通りだと思います。一方で、ネットショップに関して言うと、例えば滋賀県の方からご注文をいただいたりとかそういう広がりがあったんですよね。もちろん、お店にお越しいただける方は直接いらっしゃって頂きたいけれども、ネットショップもできるだけ私たちの思いや声などをそこに言葉で添えたりしながら手作り感を出来るだけ伝えられるショップになるよう努力はしております。
なるほど。だからこそチャレンジしていけるものもありそうですね。おだまき工房さんの地域との密接な連携の良さとネットの良さみたいなものを結び付けていくような課題があるかもしれませんが。
そうですね、その点はとても難しい課題だなあとも思いますが。でも、うまく工夫やいろんな力を借りながらできればいいかなと考えています!
ソーシャル グッド ロースターズ千代田さんの活動について
ソーシャル グッド ロースターズ千代田は、利用者さんが「何か特定の作業をやるだけ」とか「できることをやるだけ」ではなくて、「コーヒーにかかわるすべての工程」に関わって頂きながら、自分のキャリアや「ありたい自分の姿」を仕事を通じて見つけていってもらうというのをとても大切にしながら運営をしています。
こだわっている点は、4点あります。1つめは、利用者さんが働く1人の人間として「自信と誇りを持って働ける職場」であるということ。ソーシャルグッドロースターズ千代田を設立するときには、デザインや立地も含めて「いい職場だよね」「ここで働きたいよね」って思ってもらえることを大事にしながら1つ1つの要素を選びました。そもそもコーヒーも、必ずコーヒーである必要性はなくて、みんなが楽しくやりがいを持って働ける仕事を探したらたまたまそれがコーヒーだったということなんです。
あと2つめは、「作業ではなく仕事」だということ。私は、とにかく作業分担をやって「あなたはこれができるから」「これしかできないから」って言うことに、違和感を覚えていたんです。ソーシャルグッドロースターズ千代田を、自分自身の仕事としてプロの技術や現場の経験を体験できる場所にしたいと考えて運営しています。
3つめのこだわりは、「障害を持った方と一般の方がとにかくボーダーレスに出会えるところ」であるということ。普段、障害を持った方と改めて出会う機会っていうのはあまりないと思うんですよ。私自身も元々は障害を持った方との関わりは全然なくて、企業で人事をやっていたんです。担当業務において「障害者採用」に関わる中で、初めて障害を持った方と出会って「こういう方たちなんだ」っていう認識をもって、普通になっていったというプロセスがあります。だから、一般の方にも「コーヒーを飲む」という経験を通じて障害を持った方と出会ってほしいという想いに至ったわけなんです。
4つめのこだわりは、「社会貢献」です。私たちは作ったコーヒーを販売した利益の5~10%を生産者さんに還元しています。また、新型コロナウイルス感染症の影響でマスクがなくなったときに、売上の一部を使ってマスクを買って医療機関に寄付するとか、そういう活動もしています。
我々は常に障害を持っていたり、福祉っていうのは支援される側っていう風に思われることが多いんですけど、そうではなくてきちんと「商品を売って価値を作る」というのは逆に社会に貢献するということなので、それをきちんと見える化していくことを心がけています。
実は、新型コロナウイルス感染症の危機下のニューヨークで、本当に命を懸けて戦っていらっしゃる方たちに何かの励みになればと思って、友人を通じてうちのコーヒーを贈らせていただきました。多くの方に飲んでいただいて、海の向こうの方に「こうやって自分たちを見てくれる人がいるんだっていうのはすごくうれしかった」っていう風に言ってもらえました。もちろん私もそうなんですが、利用者さんも「自分の好きな仕事がこういう風に世界につながっているんだっていうのを感じられてとてもうれしかった!」と思える嬉しい経験になったんです。
よくボランティアとかをやっていると「人を助けているつもりが、実は助けられていたのは自分でした」みたいなことをみんな言うじゃないですか。でもやっぱりそうやって自分の必要性を感じたいのは健常者も障害者も関係ないんですね。仕事というのはそれをつなげていくものだと思うので、今回こういったプロジェクトが出来たっていうのもすごくみんなにとって自信になったんじゃないかなって思います。
常に社会というものは変わり続けていて、その中で取り残される人というのは絶対出てくるわけですよね。そういう人たちの側に立って、今の時代に合った「生きるための選択肢」とか「働く選択肢」をどう作っていくかというのはやはり福祉じゃないとできないことだと思うんですね。営利を目的とする企業ではなかなかできないし、やる必要もないし、行政も目が届かないとか手が届かないとかがある。だからこそ我々福祉の事業者というのは、民間民営でこういうことにチャレンジするということが出来るんだと思っています。
参加者の皆様からは「利用者さんは具体的にどのような障害を持っている方がいらっしゃるんですか?」という質問を頂きました。
いわゆる3障害全ていらっしゃいます。ソーシャルグッドロースターズ千代田のお店がある千代田区は、精神障害者の方向けの施設を15年くらい前から作ろう作ろうといって実現出来なかった背景を持っていました。
それで、千代田区と協定を結んで、精神障害者向けの施設を作る約束をしました。そして、ソーシャルグッドロースターズ千代田の事業をいざ初めてみると、精神障害の方だけではなく、身体障害の方も知的障害の方も働きたいと仰っていただけたんです。そのようなことがあって、結果的には3障害、どんな障害を持つ人でも一緒になってコーヒーを作るというスタイルが確立しました。
実は、このスタイルに関して周りの人から「色々な障害を持つ人が一緒の作業をして、本当に大丈夫なの?」という心配を頂くこともあったんです。
でも、いざやってみたら、それは杞憂でした。コーヒーづくりの仕事を通して、自然とお互いの理解が進んで、協力しあって仕事をする環境が生まれたんですよ。
そういう環境が生まれる理由って、作りあげる過程に色々な仕事があるっていう、コーヒーづくりの仕事に関わってたりするんでしょうか?
関わっていますね。例えば、身体に障害のある方が仕事をするには、作業スペースや移動スペースを広くとらなければならないんですが。
その方がいらっしゃる前は、みんな、物を乱雑に店内に置いてたんですよ。その方が一緒に働くようになってからは、動けるスペースを確保しなくちゃ!って、自然と整理整頓ができるようになったんです。
「ここから先は通路だから!」って、テープを使ってラインを引いて、物の置き場を決める工夫も生まれました。
ディスカッション
ここからは、皆様からの質問をもとにしたディスカッションで特に盛り上がった内容をお伝えします!
働いている人のことを、「利用者」と呼ぶことについて。
ディスカッションが盛り上がる中、参加者の方から「働く障害者のことを『職員』と呼ばずに『利用者』と呼ぶのはどうして?」というご質問を頂きました。
この話を深くしていくと、就労支援の構造的な部分の話にもなってきてしまうかもしれませんが。言われてみれば確かに、どのようにお呼びしていくのか?というのは論点ですね。皆様、呼び方についていかがお考えでしょうか?
言葉に惑わされない方がいいんじゃないかと思うんですよ。利用者さんと呼ぼうがメンバーと呼ぼうが言葉そのものに意味はあんまりなくて、どういう関係性とか、どういうある種の立場なのか、それは例えば就労継続支援というのはA型であれB型であれ、福祉の法律に基づいたサービスを提供するっていう側面は必ずあるんです。サービスを提供する側と受ける側っていうのは、これは良い悪いではなくて、法律上規定されているわけだから、あるんです。
一方で、A型の場合は特に雇用契約をします。職員であろうがメンバーであろうが雇用契約するわけだから、就業規則もしっかりあるし、同じ働く仲間なんですよね。
そういう意味ではマインドは同じ働く職場の仲間なんです。だから言葉だけ聞いてると利用者さんって言葉がでてきても、それはあくまで制度上のことであることが多くて、実際はどういう関係性の中で仕事をしているかということの方が本質なんだろうと私は思っています。
制度上はやっぱり利用者であり職員でありというところがどうしてもあるので、利用者っていう言葉は私もよく使いますが、一方でメンバーという言い方もします。気持ちとしてはですね、理想としては一緒になっていいものを作って、このおだまきを良い場にしていくんだと、一緒になって地域と繋がっていくんだという気持ちでやりたいなと思ってはおります。
常々思ってはいますけど、実際制度の中でやって、色々運営しながらやっていかなきゃいけない側面もありますので、中々その辺はうまく折り合いつけながらやらなきゃという思いではいます。
そうですね。本当にお2人がおっしゃっていることがそのまま同じ意見です。私自身は話す場所とか相手によって使い分けています。今回は、福祉の制度とか施設に関わることなので、利用者さんという呼び方をしています。我々がサービスを提供する側なので利用者さんという区別や説明は必要だったのでこういう言葉を使わせていただきましたが。
一方でコーヒーを飲みに来るお客さんとか福祉とまったく関係のない方や、背景を知らない方の時は、スタッフですね。お客さんからしたら障害の有無関係ないんですよ。
どういう人で、どういう人柄の人が、どう気持ちよくコーヒーを接客してくれたかが大事なので。
うちはいろんな人がいますっていうことだけなので、そこは本当に区別する必要はないと思っています。後は強いて言ったら、結局リスペクトがあるかないかですね。呼び方とか関係性の中に、ちゃんと相手の個性を認めるリスペクトがちゃんとあれば、おのずとそれってお互い認めあえるんですけど、そういう感情が抜けたら、たとえ「利用者様」とかどんだけ言葉で丁寧に言っても、何も生まれないので、大事なのはそこだと思います。
コミュニケーションスキル、とは??
議論が盛り上がり、時間があと残りわずかとなる中、「最後にお三方にこれだけはお伺いしたい…!」と、司会のH松から下記の質問を提示させて頂きました。
昨年の津田塾祭のパネルディスカッション「インクルーシブな働き方ってなんだ?あったらよいのに、こんな就活、こんな職場」において、当事者の学生から就活に関してこのような意見が寄せられました。
「企業との面接で求められているのは、コミュニケーションスキルなのではないかと思う。
でも、アルバイトを一切したことがない私は、そのスキルがあるかを示す証拠が出せない。」
実際のところ、仕事で求められるコミュニケーションスキルはどのようなスキルで、どのくらい重要なのでしょうか…??
この問いかけに対し、シンポジストの皆様方から、下記の通り心強いコメントを頂きました!
コミュニケーション能力ってなんですかっていう話なんですよ。
僕は、合意形成能力だと思っています。
合意形成するためには、やっぱり自分の意見は伝えなきゃいけないし、人の意見も聞いて、ちゃんと冷静な立場で考えて、自分の意見だけを主張するんじゃなくて相手の意見のいいところも汲んで、最後一緒に答えを見つけるっていうのがコミュニケーションだと思うんですね。で、それが会社であろうが札幌チャレンドみたいなところであろうが、仕事をするとか人と何かを一緒にする、自分ひとりだけが何かをするんだったらいいんだけど、人と何かを一緒にするっていうことが社会にいるっていうことなので、合意形成する能力が必要で、会社の中でもうちょっと平たく言うと、よくホウレンソウって言うんですよね。報告、連絡、相談。この3つさえできていれば会社の中でコミュニケーション能力があると言えると思います。
よく誤解されるのが、発達障害の人が特に懸念されるのは、場の空気を読んで冗談を言うとか、世間話をしなきゃいけないとか、これができるかできないかを、コミュニケーション能力あるないっていう風に誤解をしている人が非常に多いです。
札幌チャレンジドはそれを一切求めないし、それが苦手な人ばっかりがいるから、めっちゃ静かだし、誰もそれを必要としない。そんなことなくったって仕事はできるっていうことが分かっているから、そういうことを求めない職場が形成できてきているんですね。
だから、H松さんの質問に話を返すと、その会社が求めているコミュニケーション能力が何かということなんですよね。
例えば面接で確認するいいと思うんですよ。「どんなコミュニケーション能力を求めるんですか?」って聞いて、「世間話できなきゃいけないんです」って言われたら、それは、「私それ出来ないからここの会社は逆に私は入りません」でいいし、アルバイトしたことなくったって大丈夫です。
「おたくの会社で求めているコミュニケーション能力は何ですか。普通の会社はホウレンソウのはずなんです。だから私はやったことちゃんと報告もできるし相談もできるし、連絡もきっちりできます」と言えばいい。別にアルバイトじゃなくったって、ホウレンソウが必要な場面って今まで生きてきた中であるはずなんです。自分はこういう場面でこういうホウレンソウができました、してきましたって言えば、あなたはコミュニケーション能力があるってみなされるはずです。それをみなせないような会社だったら入らないほうがいいですよ。
加納さんの話と少し繋がりますが、うちの作業所にくるメンバーの大半はコミュニケーション能力が苦手な人が多いですね。実はうちの職場も来ると黙々と機織りの仕事をやっています。どっちかっていうと人と付き合うの苦手ですっていう人が来るんです。
別に無理にみんなと仲良くしなくてもいいし、なんか一生懸命話さなければいけないということはないですよ、静かに織っててもらっていいですよって言います。
通ってきて織っていく中で、織っていくものが展示会とか色んなところで人へつながっていくこともありますし、作業所の中でもお互いにそれなりに仕事する中で手伝ったりということが、自ずと生まれてくるものがあります。
コミュニケーション能力を高めるというよりですね、人と繋がっていけるという信頼感とか安心感みたいなものを高めていくことが大事じゃないかなと思います。
そこに不安を抱えて自信を失っている人多いかなと思うので、そこはじんわりとでもいいので、人と繋がっていけるんだっていうようなものが持てるといいんじゃないかなという風に感じております。
コミュニケーションの話ってすごく深いし、支援を考える上でコミュニケーションをどう考えるかっていうのは、1番深いところだと思います。
そういう意味では加納さんがおっしゃっていたホウレンソウが出来ればっていうのは、とても共感するし、よくわかりますし、岡田さんがおっしゃっていた、当事者の方が不安を感じておられるのもすごくよくわかるんですね。
私も今、自分で何を求めているんだろう?って考えたんですけど。
話し方を変える必要はないと思うんですよ。やっぱり10年20年生きてきたら、自分なりの話し方とか、自分の好き嫌いとか人間性ってできるじゃないですか。社会人になったら突然それを変えて、いきなり判を押したような立派な社会人になれって誰もできないと思うんですよ。
でも、何か話すときに最低限何か守らなきゃいけないルールと、忘れちゃいけない心構えはあります。心構えの方は、リスペクトだと思うんですよね。他者に対する尊敬とか尊重とか、相手が大事にしていることを大事にすること。それをできるようにするためには、学ばなきゃいけないことってやっぱりあって。
例えば、不安だと思うんですよ、知らない人と話すのって。私もこうやってこういう場で話すのもちょっと不安があるんですけども。不安を乗り越えるために努力することとか、普段から考えてみるとか、自分が何を話したいかっていう話したい事を見つけるとか、そういったことを学ぶ場が就労B型っていう場所なのかもしれないんです。
で、少なくとも我々は、一人ひとりの話し方とか考え方を否定することはしないです。相手も我々の考え方を否定しないでほしいんですよね。こうお互いに理解しようとしあうと。
それをコーヒーの仕事を通じて出来た時にうまれるのは、一体感とかチーム感とか、お互いを尊重する感じ。
別にチーム感といっても、「飲み会行こう!」とは言わないですよ(笑)
「じゃあ今週末、俺と飲み行こうよ!」ってそういうのは重たくてしょうがないから。ふつうに顔見て、元気だったら嬉しいよねっていう関係性があれば、本当に十分なんですよ。
そのためのツールとしてホウレンソウができるとか、あと挨拶。ちゃんと顔をみてこんにちはとか笑顔が出せるとかね。やっぱりそれは大事だと思うんですよ。
そのためには、技術と思って割り切って覚えていくっていうことも必要なことなのかなと思いました。
参加者からのご感想
シンポジウムにも、たくさんのご感想を頂きました。職場見学と同じく、一部抜粋してご紹介いたします!
1つの質問に対してお三方それぞれから回答をいただけたので比較したり共感したりしながら聞くことができました。みなさんの意見を聞いて、働くということについて改めて考えさせられました。多様な社会の在り方を学ぶことのできた貴重なシンポジウムでした。
坂野さんが「障害者と話す機会などなかったからわからず怖かった」とおっしゃっていたのは、私もふくめ普段障害のある方と触れ合う機会がない多くの人が思うことだと感じました。しかし、今回の職場体験、シンポジウムに参加して、障害のある方も私と変わらない方達なのだなと感じました。またコーヒーショップで働いてコーヒーを作り販売する、バッグやポーチを裂き織りで作り、みんなに見てもらい、販売するという私たちと同じように社会で働いているのだなと改めて実感しました。また、私たちが普段見ている動画サイトのコメントの監視や航空券予約サイトの記入などされているということで、私たちは勝手に障害者を「支援している」という立場になりがちですが、逆に「支援されている」立場でもあるのだと感じました。
コロナの状況の中でも普段通りの状況であっても、パネリストの御三方が利用者さんの声を汲み取り、各々が最大限に力を発揮できるように環境を整えているところが印象的でした。企業が合意形成をしていくにはコストがかかるかもしれないし、難しいかもしれないけれど、合理的配慮の必要性や見直しを進めていこうとする人が一人でも会社や社会に広がっていくことが、社会全体として就労の機会が増えていくことに繋がるし、生き方の多様性にも結びついていくのではないか感じました。また、私は人と話すことが苦手なので、コミュニケーション能力のお話の中で、職場では職場で必要なコミュニケーションができればいい、合意形成で自分の伝えたいことを伝えられることがコミュニケーション能力の一つの考えたど聴いたことで、自分の中にあった不安が解消されて、今後就活していく上でも自信がつきそうです。どんな働き方をしている人が周りにいて、どんな環境を整えているかを知ることができました。私自身もどんな人と、どんな働き方をしたいかを考える上で非常に参考になりました。
コミュニケーションについてのディスカッションが特に興味深かったです。企業様側がコミュニケーションスキルを求めているのは知っていましたが、それが本質的にどういうものであるのか考えたことがありませんでした。それこそ、世間話をするスキル、特に女性であった場合に接待をするスキルとしてのコミュニケーションを求められることもあるのか、少し嫌だな、と学生の私は思ってましたが。こちらからそのようなコミュニケーションを求めている企業は願い下げだと、力強く言えるようになったかと思います。
「利用者」「支援者」「職員」などの呼び方や、コミュニケーションスキルについて考えながら、柔軟な働き方があるのだと実感した。私はまだ大学1年で接客のアルバイトはおろかインターンシップにも参加できていないのだが、自分のイメージしていた「企業」は「働く人や環境」よりも「働かせる企業側」が主導権を握っていたため、その予想が良い意味で覆され、こういう社会で誰かと働くことが少し楽しみになった。
福祉事業について素晴らしい活動だと頭の中では理解していても実際に行うのは難しいだろうと感じてしまっていて、どこか綺麗事のように思っていた部分もあったのですが、それを長年自分の人生をかけてまで体現されている方々のお話や仕事場の様子を見て考え直しましたし、その姿に感動しました。またシンポジウムの中では社会モデル、合理的配慮についてや本当に大切なことは表面的なことではなく本質を見ることだ、といったお話もあり、前日のラジオで学んだ内容と関わっている部分もあったので実際に社会の中で活用されている場を知ることができて面白かったです。
最後のコミュニケーションについてのお話も、福祉の問題からコミュニケーションの問題につながっていったので福祉は奥深いと思いました。相手へのリスペクトを持つことや最低限のルールを守ることが大切など障害の有無に関わらずまずは人としての在り方が最も大切だと思いました。だからこそ私も相手が障害者であるかどうかに関係なくスタンスを変えずに接することができるようになりたいと思いました。そして、障害についての知識を持っておくことは大切ですが、一番大切なのは障害を特別なものとしてではなく個性と捉え、一人の人との付き合い方を考えることだとも感じました。なので福祉を学ぶということは人間としての器を広げることでもあると思いました。パネリストの方々と先生方のお話を聞いて自分はまだまだ人として未熟だと痛感しましたが、この2日間を通して考え方を知って頭では理解したので、それを体にまで染み込ませて自分のものになるまで落とし込んでいきたいと思います。最後に、今回の企画を通して福祉の世界は優しさで溢れていてとても素敵だと感じました。この2日間ずっと、福祉や障害者に対する考え方から優しさだったり人の温かさを感じていたので、自分も将来何らかの形で関わってみたいと思いました。今回まなキキのイベントに参加させて頂き、自分の生き方考え方をもう一度考え直すきっかけにもなりましたし、自分の社会に対する考え方も変わったと思います。本当にありがとうございました。
参加して下さった皆様、本当にありがとうございました!このイベントが、「はたらくこと」を考えるきっかけになっていたら、H松はとっても嬉しいです。
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