フネで旅する漢字の海原(うなばら) シリーズ④春のおさかな天国

お魚をくわえて走る猫 語源

さんかくすと文がえます

鰊・鯡 にしん

ニシンの写真。背中は群青色の筋。一見小ぶりのお魚。

ニシンの語源ごげんは、身を二つにいて食用にすることから身が二つで二身にしん」とする説が有力とされています。

ニシンはにしんにしんと書きますが、
にしん」には中国で「小魚の名」という意味を持ち、
にしん」は「フナに似た魚の名」または「魚卵」という意味を持つ漢字だとか。

 

M先生
M先生

ちなみに体長は約35センチ
築地市場などで取引される魚の中には2メートルを超えるマグロなどもあることを考えると、そのサイズは確かに小さい方、ともいえるかもしれません。

また別の由来もあるようです。

ニシンはもともと寒流性回遊魚かんりゅうせいかいゆうぎょで、北海道やサハリン西海岸でれることが多いお魚でした。
北海道地域に住んでいたアイヌ民族の人たちにとってニシンはよく食べるお魚の一つだったそうです。

それに由来ゆらいして、江戸時代、松前まつまえの人は、「ニシンは魚にあらず、松前まつまえの米なり」と言って、「魚」に「あらず」とニシンを「にしん」と書いたという説です。

 

 

それから、お正月にいただくおせち料理によくある「数の子」はニシンの卵です。

おせち料理は、一年の始まりに祈りや願いをこめていただく食事として、願掛がんかけされたメニューがいっぱい込められますが、数の子にはどんな思い入れがあるのでしょうか。

 

M先生
M先生

数の子」という漢字のとおり、非常に多くの卵を持つことから、
「たくさんの子に恵まれますように」「わが家が代々栄えますように」という願いが込められているのですね。

 

 

ニシンはアメリカやカナダ、ロシア、ノルウェーなどでもれ、親しまれている魚です。

ヨーロッパではニシンは酢漬すづけや燻製くんせい缶詰かんづめ内で発酵はっこうさせて食べる(スウェーデンのシュールストレミングとして知られています。ものすごく強烈きょうれつなにおいを発する、ということでも有名)ことが多いとか。

 

  

M先生
M先生

ジブリ映画の『魔女まじょ宅急便たっきゅうびん』でもニシンが登場することは知っていますか?


キキが土砂降どしゃぶりの中ニシンのパイを届けるエピソードが出てくるのですが、実在じつざいするイギリス料理だそうです。別名をスターゲイジーパイ星を見上げるパイというニシンのパイです。

 

イギリスや北欧ほくおうの人たちにとってニシンはとても馴染なじみが深い魚であったようであることは、「ヘリンボーン」からもうかがえます。

 

ヘリンボーン」とは模様もようの一種のことで、マフラーやセーターなどで「ヘリンボーン柄」など言われたりします。

herring ニシン」の「bone 骨」ということで、ニシンを開きにしたときに見える骨を想起そうきさせる模様もよう、のことです。

日本では同様の柄のことを「杉綾すぎあや」と呼び、山形と逆山形からできたがらとして知られます。

 

M先生
M先生

日本ではの名前に由来ゆらいするのですね。

なんだかり方のデザイン一つでも、その地域に暮らしていた人たちの風景が連想できるような気がします。

 

アイヌの人たちの歴史とニシン漁も欠かせません。

乱獲らんかくがあまりに進んだことが原因で現在はほとんどることができない魚です。
現在食べているニシンも輸入したニシンであることが多いようです。

ニシンは3~5月にかけて、産卵さんらんのために大挙たいきょして北海道の西岸に集まってきたそうで、それに由来ゆらいして「春のおとずれをげる魚」として「ハルツゲウオ」とも呼ばれていたそうです。

 

 

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