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鰊・鯡 にしん

ニシンの語源は、身を二つに裂いて食用にすることから身が二つで「二身」とする説が有力とされています。
ニシンは鰊や鯡と書きますが、
「鰊」には中国で「小魚の名」という意味を持ち、
「鯡」は「フナに似た魚の名」または「魚卵」という意味を持つ漢字だとか。

ちなみに体長は約35センチ。
築地市場などで取引される魚の中には2メートルを超えるマグロなどもあることを考えると、そのサイズは確かに小さい方、ともいえるかもしれません。
また別の由来もあるようです。
ニシンはもともと寒流性回遊魚で、北海道やサハリン西海岸で獲れることが多いお魚でした。
北海道地域に住んでいたアイヌ民族の人たちにとってニシンはよく食べるお魚の一つだったそうです。
それに由来して、江戸時代、松前の人は、「ニシンは魚に非ず、松前の米なり」と言って、「魚」に「非ず」とニシンを「鯡」と書いたという説です。
それから、お正月にいただくおせち料理によくある「数の子」はニシンの卵です。
おせち料理は、一年の始まりに祈りや願いをこめていただく食事として、願掛けされたメニューがいっぱい込められますが、数の子にはどんな思い入れがあるのでしょうか。

「数の子」という漢字のとおり、非常に多くの卵を持つことから、
「たくさんの子に恵まれますように」「わが家が代々栄えますように」という願いが込められているのですね。
ニシンはアメリカやカナダ、ロシア、ノルウェーなどでも獲れ、親しまれている魚です。
ヨーロッパではニシンは酢漬けや燻製、缶詰内で発酵させて食べる(スウェーデンのシュールストレミングとして知られています。ものすごく強烈なにおいを発する、ということでも有名)ことが多いとか。

ジブリ映画の『魔女の宅急便』でもニシンが登場することは知っていますか?
キキが土砂降りの中ニシンのパイを届けるエピソードが出てくるのですが、実在するイギリス料理だそうです。別名をスターゲイジーパイ「星を見上げるパイ」というニシンのパイです。
イギリスや北欧の人たちにとってニシンはとても馴染みが深い魚であったようであることは、「ヘリンボーン」からもうかがえます。

「ヘリンボーン」とは模様の一種のことで、マフラーやセーターなどで「ヘリンボーン柄」など言われたりします。
「herring ニシン」の「bone 骨」ということで、ニシンを開きにしたときに見える骨を想起させる模様、のことです。
日本では同様の柄のことを「杉綾」と呼び、山形と逆山形からできた織り柄として知られます。

日本では樹の名前に由来するのですね。
なんだか織り方のデザイン一つでも、その地域に暮らしていた人たちの風景が連想できるような気がします。
アイヌの人たちの歴史とニシン漁も欠かせません。
乱獲があまりに進んだことが原因で現在はほとんど獲ることができない魚です。
現在食べているニシンも輸入したニシンであることが多いようです。
ニシンは3~5月にかけて、産卵のために大挙して北海道の西岸に集まってきたそうで、それに由来して「春の訪れを告げる魚」として「ハルツゲウオ」とも呼ばれていたそうです。