言葉でつなぐ、つながっていく② ―「書く」ことを考える・口頭伝承から作文まで

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アイヌの物語

ほかに、アイヌ民族の方たちの口承文学こうしょうぶんがくが例として挙げられるかもしれません。

阿寒湖あかんこ温泉アイヌ文化推進実行委員会が制作した「神々とともに生る アイヌ文化遺産」の中で、

アイヌ民族は、長い年月を経て独自にはぐくんできた文学があり、近代にはいる前までは文字に頼ることなく、人から人へ口伝えで厖大ぼうだいな物語を語り継いできた

と説明しています。

 

アイヌの物語は大きく分けて3つに分けられるのだそうで、

・ 超人ちょうじん少年英雄しょうねんえいゆう大活躍だいかつやくする物語(ユーカラまたはサコロベ)
・ クマやキツネなどの自然界の神様たちが主人公の物語
・ 主に人間達が自らの体験を語ることによってアイヌ社会のできごとを伝え倫理りんりを教える物語


があります。

少年英雄の物語や神様の物語は、独特のメロディーに乗せて語られます

 

M先生
M先生

このような物語には、神々と人間との関係性を基本とする世界観、自然の中で生きていく知恵、アイヌ社会でのルールなどが豊富に盛り込まれています。
アイヌの人びとは、物語を聞くことによって文化や伝統などを学び、継承けいしょうしてきたのだそうです。

  

60のゆりかご アイヌ語音声+日本語字幕の動画になっています。

 

アイヌの神々の物語を日本語に置き換えた『アイヌ神謡集しんようしゅう』という作品は、知里幸恵ちりゆきえさんが残しています。

青空文庫『アイヌ神謡集』

  

アイヌの物語が持つ世界観を、日本語に忠実に「翻訳ほんやく」していることがとても評価されています。
知里幸恵ちりゆきえさんのことをもっと知りたいという方は、「NHK 北海道スペシャル・知里幸恵ちりゆきえ 19歳のメッセージ~「アイヌ神謡集しんようしゅう」の世界から」の動画を観ていただくとよいかもしれません。

 

M先生
M先生

アイヌ民族のことをテーマとした漫画として『ゴールデン・カムイ』という作品が最近は人気があって、アニメにもなっていますね。

日露戦争にちろせんそう後の物語ですが、アイヌ文化について触れつつも、ハラハラ手に汗にぎる物語が展開して、なかなか面白いです。(完結していません)
私は、ヒンナ、ヒンナなど口癖くちぐせになりそうです…。

 

 

ギリシアの叙事詩じょじし―ホメロスの作品から

オングさんが紹介していた「声の文化」の代表作はホメロスの作品です。

(オングさんは、「口頭文学こうとうぶんがく」という用語を、口頭伝承こうとうでんしょうや口頭で演じ語られるものにまで「文学」という術語を使ったら、これらを文字を前提とする「書かれたものの一変種」に還元かんげんしてしまうかもしれない、という理由で否定的に用いています)

 

ホメロスとは紀元前8世紀ごろのギリシアの詩人
ヨーロッパ最古の詩人と言われ、英雄叙事詩えいゆうじょじしイーリアス』と『オデュッセイア』の作者といわれていますが、なぞにつつまれた人物です。

(青空文庫で『イーリアス』を読むことができます。)

 

まだ、文字も成立しない時代。
もともと口承詩こうしょうしとして、語られ聞かれることによって作られ伝えられたといわれています。

トロイア戦争伝説に取材し、『イーリアス』は戦争と英雄の悲劇を克明こくめい冷酷れいこくに描き、『オデュッセイア』は戦争後帰還きかんする英雄の冒険ぼうけんと、故郷こきょうで彼を待つ妻の難儀なんぎと、二人の再会をロマン的につづったものと説明されています。

(百科事典マイペディアより)

 

【古代ギリシア語で歌う】イーリアス第一歌1~7行 | Singing Iliad 1, 1-7

 

ホメロスの物語がどのように生まれたのかをTED Edで説明もしています。

(英語音声ですが、日本語訳が表示できます)

 

『オデュッセイア』を読む前にこれだけは知っておきたいこと — ジル・ダッシュ

 

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