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アイヌの物語
ほかに、アイヌ民族の方たちの口承文学が例として挙げられるかもしれません。
阿寒湖温泉アイヌ文化推進実行委員会が制作した「神々とともに生る アイヌ文化遺産」の中で、
アイヌ民族は、長い年月を経て独自にはぐくんできた文学があり、近代にはいる前までは文字に頼ることなく、人から人へ口伝えで厖大な物語を語り継いできた
と説明しています。
アイヌの物語は大きく分けて3つに分けられるのだそうで、
・ 超人の少年英雄が大活躍する物語(ユーカラまたはサコロベ)
・ クマやキツネなどの自然界の神様たちが主人公の物語
・ 主に人間達が自らの体験を語ることによってアイヌ社会のできごとを伝え倫理を教える物語
があります。
少年英雄の物語や神様の物語は、独特のメロディーに乗せて語られます。
このような物語には、神々と人間との関係性を基本とする世界観、自然の中で生きていく知恵、アイヌ社会でのルールなどが豊富に盛り込まれています。
アイヌの人びとは、物語を聞くことによって文化や伝統などを学び、継承してきたのだそうです。
アイヌの神々の物語を日本語に置き換えた『アイヌ神謡集』という作品は、知里幸恵さんが残しています。
アイヌの物語が持つ世界観を、日本語に忠実に「翻訳」していることがとても評価されています。
知里幸恵さんのことをもっと知りたいという方は、「NHK 北海道スペシャル・知里幸恵 19歳のメッセージ~「アイヌ神謡集」の世界から」の動画を観ていただくとよいかもしれません。
ギリシアの叙事詩―ホメロスの作品から
オングさんが紹介していた「声の文化」の代表作はホメロスの作品です。
(オングさんは、「口頭文学」という用語を、口頭伝承や口頭で演じ語られるものにまで「文学」という術語を使ったら、これらを文字を前提とする「書かれたものの一変種」に還元してしまうかもしれない、という理由で否定的に用いています)
ホメロスとは紀元前8世紀ごろのギリシアの詩人。
ヨーロッパ最古の詩人と言われ、英雄叙事詩『イーリアス』と『オデュッセイア』の作者といわれていますが、なぞに包まれた人物です。
(青空文庫で『イーリアス』を読むことができます。)
まだ、文字も成立しない時代。
もともと口承詩として、語られ聞かれることによって作られ伝えられたといわれています。
トロイア戦争伝説に取材し、『イーリアス』は戦争と英雄の悲劇を克明に冷酷に描き、『オデュッセイア』は戦争後帰還する英雄の冒険と、故郷で彼を待つ妻の難儀と、二人の再会をロマン的につづったものと説明されています。
(百科事典マイペディアより)
ホメロスの物語がどのように生まれたのかをTED Edで説明もしています。
(英語音声ですが、日本語訳が表示できます)