言葉でつなぐ、つながっていく④ 文章から、にじみ出る個性の不思議

読み物

さんかくすと文がえます

一人称代名詞にもいろいろあるんだなあということを見てきましたが、主語の有無うむでもニュアンスが変わってくる、という話をしました。
例えばどういう感じでしょうか。

例えば自己紹介の場面

 

M先生
M先生

M先生です。

 

などあえて、一人称代名詞を使わなくても自分の名前を名乗なのっているということは分かりますね。

 

M先生
M先生

わたし>はM先生です。

 

一方で、一人称代名詞を使って名乗なのることもできます。
(一人称は「わたし」でなくても「あたし」でも「おいどん」でもよし。でも、M先生がよく使うのは「わたし」です。)

 

M先生
M先生

あたくし>はM先生です。

 

実際に、「あたくし」なんていうと、ちょっとイメージ変わりますね…。うふふふ。

 

では、こんな名乗なのり方はどうでしょうか?

 

M先生
M先生

<わたし>、M先生です。

 

気づいていただけたでしょうか。
助詞じょしを「」から「」に変えてみたのですが、この一字が変わるだけでもまた印象が大きく変わります。
なんとなく、強調きょうちょうした名乗なのり方に見えますよね。

 

助詞じょしは、言葉に意味を肉付にくづけする語、とも説明されることがありますが、どういう助詞じょしをつけて文章をつくるか、ということでも随分ずいぶん伝わってくるニュアンスが変わるのですね。

 

M先生
M先生

<わたし>も、M先生です。

 

といわれると、他にも「M先生」という名前の人がいるのかな?というニュアンスが出て来ますね。

 

謎の人物
謎の人物

<わたし>の、M先生です。

 

…となったら、もはやM先生の自己紹介じこしょうかいではないですね。
なぞの人物と、何かしらの関係性かんけいせいがありそうですね。

 

謎の人物
謎の人物

<わたし>と、M先生です。

 

これは、なぞの人物とM先生が一緒いっしょ自己紹介じこしょうかいしている感じですね。
ただ、なぞの人物は全く自己紹介じこしょうかいはしていませんが…。

 

…とたった一字でありながら、大きく文章の意味の方向性を動かす「助詞じょし」の不思議ふしぎを感じていただけたのではないでしょうか。

 

いろいろな助詞

助詞じょしには、主に4つの種類しゅるいに分けることができます。
東京外国語大学言語とうきょうがいこくごだいがくげんごモジュールから転載てんさいしてご紹介します)

  

1.格助詞かくじょし
主に名詞について、その名詞と他の語(ほかの名詞、あるいは動詞・形容詞)との意味関係を示す。

山田さん田中さん

2.接続助詞せつぞくじょし
従属節じゅうぞくせつ術語じゅつごとなっている動詞・形容詞・名詞について主節しゅせつとの意味関係を示す。
朝起き顔を洗います。
春になるあたたかくなります。

3.副助詞ふくじょし
さまざまな語について、特別な意味を付け加えます。
この本読みました。
この本読みました。
この本だけ読みました。

4.終助詞しゅうじょし
主に文末ぶんまつに現れ、話し手から聞き手への伝達でんたつともな態度たいどなどを表します。
あしたは日曜日です
明日は日曜日です

 

 

なかなかむずかしいですよね。
以下のサイトでは、あやまった例もたくさん紹介されていて、そこから受けるイメージもあわせて考えることができます。

 

 

でも、この助詞じょしはなんだろう?という意識いしきをして覚えるよりも、
さまざまな文章を読みながら、助詞じょしの持つニュアンスや意味、使い方にたくさんれて、なじみながら覚えていくのがよいのではないかな、と思います。

 

 

ちなみに二人称の代名詞にはどんなものがあるでしょうか?
英語でいうところの「 you 」。みなさんもいろいろ考えたり探してみたりしてみてくださいね。

 

 

読み物国語(こくご)言葉を書く文法の知識

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  1. H松 H松 より:

    M先生、人称代名詞のお話をありがとうございました。記事を読んで、私が小学生の頃、人称代名詞のトラップに引っかかって「やられた~!」と思った作品を思い出しました。星新一の、なりそこない王子という本の中に収録されている、「収容」という作品です。私、という表現の面白さを学べる作品と言えるのかもしれません(笑)内容は、どう考えても子ども向きではないですが…。ちょっと「おませ」な小学生にはピッタリかも。是非、お暇なときにご一読ください。

    • M先生 より:

      H松さん、コメントくださりありがとうございます!
      むむむ、星新一の『なりそこない王子』の「収容」という作品ですね!
      ぜひチェックしてみよう…!
      ちょっと話がそれますが、「私」と書かれている文章を読むときにみんな「わたし」と読んでいるのか「わたくし」と読んでいるのかは気になるんですよね。以前、点訳をお願いしたときに「わたし」と自分では読んでいたものが「わたくし」と点訳してくださっていたことがあって、点字ならではの文化なのか、読む人によって変わるのか、興味深かったのです。
      漢字の読み方は点訳など翻訳するときは、相当調べて訳されるそうですが、「私」レベルになるとどうも判断がつかないものなあ…と。
      なかなか興味深いところです。

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