フネで旅する漢字の海原(うなばら)シリーズ③ フネの名前

海賊船 読み物

さんかくすと文がえます

日本の重巡洋艦、軽巡洋艦(けいじゅんようかん)(じゅうじゅんようかん)

青葉(あおば)

 

 京都(きょうと)府と福井(ふくい)県の間に位置する青葉山(あおばやま)から(ちな)んで名づけられています。
若狭富士」(わかさふじ)異称(いしょう)を持つ山です。東西二つのピークを持つ山として知られています。

 崇神天皇(すじんてんのう)古墳(こふん)時代の第10代天皇といわれている。『日本書紀(にほんしょき)』にも登場)の時代に、天皇の命令で丹波(たんば)の国(現在の京都(きょうと)府、兵庫(ひょうご)県、大阪(おおさか)府の交わるあたり)を訪れた彦坐王(ひこいますのみこ)という王子が、玖賀耳之御笠(くがみみのみかさ)を討ったという伝説がある。
 …この難しい漢字の玖賀耳之御笠(くがみみのみかさ)なるものの正体とは…土蜘蛛(つちぐも)の化け物だそうです。

土蜘蛛
M先生
M先生

ひぃぃぃ。また出た。ばけもの!

 

妙高(みょうこう)

 

 新潟(にいがた)県の妙高山(みょうこうさん)(ちな)んで命名されています。
妙高山(みょうこうさん)は日本百名山にも数えられる、「越後富士(えちごふじ)」の異称(いしょう)を持つ山。この山にも何か伝説はないのかしら?と探してみました。

 どうやら勝負ごとに関連する伝説はうまく見つけられなかったのですが(見つけたらご報告します!)、妖怪(ようかい)たちがたくさん出没(しゅつぼつ)する地域として知られていたりもしたようです。
妖怪(ようかい)は、人々に(わざわ)いをもたらす存在として恐れられもしたのですが、とくには恵みをもたらす存在としてもあがめられてきた、といいます。

 妖怪(ようかい)出没(しゅつぼつ)について書かれた本として橘崑崙(たちばなこんろん)が著した『北越奇談(ほくえつきだん)』や鈴木牧之(すずきぼくし)の『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』は越後(えちご)新潟(にいがた))の二大奇書(きしょ)として有名。
 この二つの書に共通して書かれていたのが「山男(やまおとこ)」の存在だとか。
身長は6(しゃく)(約180㎝)、赤い(かみ)と灰色の肌で牛のような声を出し、(しゃべ)らないものの人間の言葉を理解できたそう…。

 

M先生
M先生

うーん。ちょっとドキドキしてしまいますね。

 

 新潟(にいがた)公式チャンネルで林修(はやしおさむ)先生が『北越雪譜(ほくえつせっぷ)』について解説している動画もありました。

 

 

利根(とね)

 

 関東地方を流れる利根(とね)川から(ちな)んで名づけられた。
 利根(とね)川は、大水上山(おおみなかみやま)を水源として関東地方を北から東へ流れ、太平洋に注ぐ一級河川(かせん)河川(かせん)の規模は日本最大級で、日本の首都(けん)の水源として国内の経済活動上、重要な役割を果たしています。

 「坂東太郎(ばんどうたろう。“東国にある日本一の大河”)の異名(いみょう)を持つ日本三大暴れ川の一つ。(他の二つは筑後(ちくご)川(筑紫次郎(つくしじろう))、吉野(よしの)川(四国三郎(しこくさぶろう)))
 “名前”をつけていた、にしても、「暴れ川」というくらいです。本当に乱暴者で数えきれないくらいの水害が発生していたといいます。

 

M先生
M先生

川に太郎君、次郎君、三郎君と名前を付けてたのですね!

 

 

球磨(くま)

 

 熊本(くまもと)県の球磨(くま)川にちなんで命名されている。
熊本(くまもと)県南部の人吉盆地(ひとよしぼんち)貫流(かんりゅう)し、川辺(かわべ)川をはじめとする支流(しりゅう)(あわ)せながら八代平野(やつしろへいや)に至り、不知火(しらぬい)不知火海(しらぬいかい))にそそぐ一級河川(かせん)熊本(くまもと)県内最大の川で、最上(もがみ)川・富士(ふじ)川と並ぶ日本三大急流の一つ。

 語源は不明とされているが、1772年に(あらわ)された『肥後日誌(ひごにっし)』は、

  この川水は九万他により落ち入る。故に九万川と称すとも云う

と記録が残されているそうです。
「九万の支流を持つ川」としての意味も持つのかも、とされています。

 ちなみに不知火とは、夜間の海上にたくさんの光が点在し、ゆらめいて見える現象を意味する言葉。
今では蜃気楼(大気の温度差が原因で生まれる、遠くの景色が伸びたり反転したりして実際とは違う景色に見える現象のこと)の一種と理解されているそうですが、かつては怪火(かいび)とされ恐れられていたとも言います。
近づくと遠ざかるものとされ、竜神の灯火とも呼ばれたそうな…

 

M先生
M先生

蜃気楼(しんきろう)の一種、と分かってはいながらもやはり神秘的‥不思議、と感じる人が多いらしく、今も「不知火(しらぬい)・海の火祭り」というお祭りも開催されているそうですよ。

 

 

阿賀野(あがの)

 

 新潟(にいがた)県と福島(ふくしま)県を流れる阿賀野(あがの)川から(ちな)んで命名された。
福島(ふくしま)県・群馬(ぐんま)県に源流を持ち、新潟(にいがた)県を流れ日本海にそそぐ日本の河川(かせん)

 阿賀野(あがの)川は、古来から周辺地域に豊富な水量で豊かな恵みを与えてきた川として知られていましたが、戦後、高度経済成長期に工業廃水(はいすい)によって水質が汚染されてしまいます。
四大公害病として知られる新潟水俣病(にいがたみなまたびょう)です。
新潟(にいがた)県立環境と人間のふれあい館のホームページでも、新潟水俣病(にいがたみなまたびょう)について丁寧(ていねい)に説明がされています。

 阿賀野(あがの)川は信濃(しなの)川とともに、広大な新潟(にいがた)平野を作った河川(かせん)としても知られています。

日本の巡洋艦について(じゅんようかん)

 

 

 

M先生
M先生

日本を代表する大きな山や川など、暮らしの中でその存在を無視できないような山や川の名前を船に名付けていたみたいですね。
それだけさまざまなエピソードや神話が登場します。
人々の暮らしに身近で、本当にとなり合わせにあるものであったから、戦後の公害病などを引き起こす原因になったともいえるかもしれません。

 

日本の一等駆逐艦(いっとうくちくかん)

睦月(むつき)

 

 旧暦・陰暦(いんれき)の1月を指します。
もともとこの言葉の意味・由来・語源にはいくつかの説があるそうですが、もっとも有力なのは睦び月(むすびつき)が「睦月(むつき)」に転じたというものだそう。
仲良くすること・仲睦(なかむつ)まじいこと、互いに親しみあうなどの意味を持つ「(むつ)び合い」の(うたげ)を、お正月に家族や親族が集まる月に行うことが由来だそう。

 

白露(しらつゆ)

 

 (つゆ)を美しく表現した言葉で、草の葉の上に乗って光っている(つゆ)水滴(すいてき)のことを指します。
「白(しら)」は、清らかさを強調しています。

小倉百人一首の第37番には文屋 朝康(ふんや の あさやす)が読んだ句として、

  白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける

があります。

 

陽炎(かげろう)

 

 春の季語としてしられています。
気候条件から夏に多くみられる現象です。常に変化してできては消えるその様子から、とらえどころのないもの、はかないものの例えとしても用いられます。
 
万葉集に収められた作者不詳の短歌には、

  今さらに雪降らめやもかぎろひの燃ゆる春へとなりにしものを

などがあります。

 

日本の一等駆逐艦について(いっとうくちくかん)

 

M先生
M先生

大和言葉(やまとことば)として知られるような言葉も多く船の名前として名付けられていたようです。
(みやび)な雰囲気、(ひび)きを持つ言葉で、そうした表現をかつての日本人も愛していたからこそ、名前に名付けたのでしょう…。

 


 艦艇(かんてい)の名前を通じて、その言葉のバックグラウンドを追いかけてきました。

 それぞれの名前に秘められた想いに注目することは、その言葉の意味や成り立ち、それだけではなく信仰や人々が心のよりどころにしてきたものの考え方や暮らしぶりにまで発展していく可能性もありそうです。
同時に、戦争の歴史は冷静に学んでいかなくてはなりませんね。

 

M先生
M先生

家庭教師をしていたとき、当時中学2年生だった男の子が、艦艇(かんてい)の名前がおもしろい!と教えてくれました。
船の種類で名前が違うこと、山岳(さんがく)河川(かせん)に由来する名前が付けられていることなどなど教えてもらって、私も興奮しました。
それで、今回の企画に至ったわけですが、みなさんのほうが詳しいかも…
新たな発見、豆知識、大募集です!!!

読み物漢字日本の地理国語(こくご)戦争の歴史文化伝説・昔話言葉の意味社会(しゃかい)

つかってみた感想大募集中! コメントを書き込むをクリックしてね。

  1. 白衣博士 より:

    M先生、ご苦労!
    でも、実は軍艦の命名基準は、ちょっと違っているんじゃよ。
    駆逐艦、一等巡洋艦(重巡)、二等巡洋艦(軽巡)はそのとおりじゃ。
    ちなみに重巡は機動艦隊の護衛など重要な任務についていたから、知っているチビッコも多いじゃろう。戦艦を出し惜しみした太平洋戦争初戦では大活躍じゃったな。
    軽巡と駆逐艦は掃海艦隊の主力で、かの戦艦大和が率いる最後の悲劇の艦隊の主力じゃった。

    で、その戦艦の名前は、「日本の旧国名」からつけられていたんじゃよ。今の都道府県名は、江戸時代より昔は、国と呼ばれて、独自の名前があったんじゃな。名戦艦として世界のビッグ7とされ、連合艦隊の旗艦を務め、最後まで生き残り大戦の悲劇の象徴となった、戦艦・長門ほか、戦艦・陸奥も旧国名じゃ。先日、水中撮影された戦艦・武蔵もそうじゃな。
    だから戦艦・大和は、旧国名の大和、つまり今の奈良県なんじゃよ。もちろん古い日本の呼び名もイメージしてのことじゃろうがな。なぜ奈良県がそんなに重要な名前だったのかは、M先生や社会の学びのナビゲーターが教えてくれるじゃろう。

    で、航空母艦の名称は、「空を飛ぶもの」から取られているんじゃ。世界初の第一機動部隊の主力「蒼龍」「飛龍」は飛ぶ龍、世界初の機動艦隊どうしの交戦を体験し甚大な被害を受けた「翔鶴」や、「瑞鶴」は鳥のイメージじゃな。

    でも「真珠湾奇襲攻撃」の南雲機動艦隊の旗艦は「赤城」でしょ?、とか、僚艦は「加賀」でしょ?と疑問に思うチビッコも多いじゃろう。
    わかっとるよ!
    実は「赤城」、「加賀」とも、元々は別の軍艦として建造され命名されたんじゃ。しかし、戦争で航空機が主力になってきたため、慌てて変更されて完成したんじゃな。だから、命名基準どおりではあるんじゃよ。本当は!
    もともと、どんな軍艦として完成される予定だったのか、みんなも考えてみよう!

    まあこのあたり、旧日本海軍が、どれほど空母を軽視していたか、あらわしとるのかもしれんのう・・・いずれにしても、もうこんな軍艦は作らなくてもいい時代が来るのが一番じゃな。

    • M先生 より:

      白衣博士!!!
      めちゃくちゃ勉強になりました…!
      そうか。日本の旧国名っていうのは、藩名みたいなものがイメージに近いのですね‥‥確かに自分の故郷の名前が船についていたりとかしたら、俄然士気もあがっていたのかもしれないです‥。廃藩置県(はいはんちけん)とか、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)とか明治維新の頃に反対や抵抗もあったと聞いたこともあるけれど、そういう国民感情への対応も関連していたのかもしれない…?
      ちなみに明治維新のときに政府軍と争った、それこそ会津などの名前はやっぱり採用されなかったのでしょうか…?その当時の日本の政権についていた政治家たちがどんな人達だったのか、にも依るのかなあ…。もはや「国語」の領域ではなくなりつつありますね汗。
      そして、航空母艦は「空を飛ぶもの」で例外はもともと違う艦艇になるはずだったものの”おさがり”みたいなものだったんですね…。なるほど…今更ながらものすごい納得…。

      なんだか、たかが「名前」なのだけど、されど「名前」で、どんどん”なるほど”がひろがっていくのがものすごく面白いです…!

      ぜひ、またみんなが知っていることも教えてほしいです~!
      白衣博士、ものすごい勉強になりました!ぜひまた教えてください~ありがとうございます!

まなキキ・プロジェクト、通販&SNSもやっています
「学びの危機」:Counter Learning Crisis Project -学びづらさに向き合う子どもたちの「学びの灯」のために-
タイトルとURLをコピーしました